新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

ギリシャと日本の経済・財政事情は全然違う

3回目になりますが、何度も経済危機やデフォルトを繰り返してきたギリシャやイタリアなどのEU加盟国やアルゼンチンなどの中南米諸国の経済・財政事情について述べてきております。日本もこうした国同様に国家財政危機や国債暴落・デフォルトの危険があるなどと不安を煽りたてる経済学者・評論家がたくさんいますが、日本の場合そのようなことになるリスクはかなり小さいと思っておいていいでしょう。

アルゼンチンやギリシャが経済・財政危機に陥った元凶のひとつは国債が自国通貨建てでないことや、固定相場制で自国の中央銀行による金融政策ができないことにあると前回説明しております。

 前回記事

しかしながら多くのマスコミや経済評論家などが伝えているように、産業政策の失敗やポピュリスト政治家や政党による放漫財政のツケといった理由も否定できません。今回は補足的にそのことを書き加えます。

ギリシャの場合2大閨閥が政権をずっと牛耳り続けました。閨閥とは血縁でつながる有力者同士の集まりで、時として反目し合うことはあれど互いに親戚関係です。持ちつ持たれつのなあなあ政治が長年に渡って続き、その閨閥は利権拡大によって私服を肥やし続けます。レントシーカーです。脱税・不正は当たり前で、公務員は民間の4倍も給与を得ていました。年金支給は早く、支給額も高いです。

ハイパーインフレについて 」編で取り上げた中南米諸国もギリシャと同じく、独裁政権や半社会主義政権が非常に多く、国営企業主導による産業政策で低効率さが目立つ上に、政治腐敗の温床となっていました。またポピュリスト政治家が多くいたのも中南米諸国の特徴で彼らは選挙票を得るために財政のバラマキをやってきています。これを行う資金を貸し付けていたのがアメリカを中心とするグローバル金融資本やIMFでした。

前回話したようにギリシャとアルゼンチンは自国通貨を放棄したり、他国の強い通貨にペッグさせた固定相場制を導入しているかしております。ギリシャですとユーロ導入以前の自国通貨はドラクマでアルゼンチンですとペソですが、両方とも貨幣の信頼度が低く簡単に値崩れしてしまいがちでした。アルゼンチンは1988~89年にかけてハイパーインフレに見舞われたときにペソをドルペッグの固定相場にし、1ペソ=1ドルにしました。これによってアルゼンチンは1990年代初頭にハイパーインフレを抑え込むことができたのですが、強いドルを後ろ盾にして安くした金利でアルゼンチンはグローバル金融資本からまた金を借りはじめます。外債のおかげで一時的にアルゼンチン経済は潤ったものの、再び1990年代末に通貨暴落危機に晒されます。アルゼンチン政府は為替介入や金利引き締めで防戦しペソ暴落を一旦食い止めたものの、深刻なデフレ不況を引き起こし経済を弱体化させ、2001年に再びデフォルトします。ここで固定相場制が破綻しました。固定相場で外債を呼び込み、それに依存してしまう危険性については原田泰教授と黒田岳史氏の 「なぜアルゼンチンは停滞し、チリは再生したのか」というレポートでも指摘されております。

ギリシャもやはりアルゼンチン同様にEUへ加盟し、弱い自国通貨ドラクマを捨てユーロ通貨を導入しますが、ユーロ建ての安い金利でまた外国から金を借り始めます。ギリシャはEU圏内でポルトガル・イタリア・スペインと並んで”PIGS”と揶揄されていますが、スペインの場合は外債で住宅バブルを引き起こし、ギリシャはますます市民・公務員天国へと突っ走ります。前回自分はドイツの傲慢ぶりを皮肉りましたが、メルケルのおばさんらがキレるのは当然でしょう。

ギリシャの場合特にまずいのは観光業以外に産業らしい産業がありません。以前は海運業も盛んでしたが、かなり廃れました。就労者の4分の1が公務員で、定刻出勤だけでつく手当などがてんこ盛りだったという有様です。おまけに手厚い年金つきでした。「社会主義国家か?」と云わんばかりです。


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そして上で述べたようにギリシャは脱税がひどく、徴税能力が低いです。
財務官僚が煽る国家財政危機の嘘 その1 バランスシートから」で日本は政府と日銀を合わせた統合政府の財政バランスシートでも、債務が超過してはいるが、750兆円近くの徴税権を資産として見立てることができるから即財政破綻にはなっていないと説明しました。

高橋洋一教授作成の日本の統合政府BS表
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ギリシャの場合は産業らしい産業がなく、企業や個人からの所得税法人税等が入ってこない上に、脱税大会で徴税権を資産にカウントできないのです。かなりトンデモな国だったということでしょう。

今の日本は自国通貨円の信認がものすごく高く、国債の方も国内の金融機関が飛びつくように買うので、発行すれば「瞬殺間違いなし」で売れます。よって国債金利がものすごく低いです。外国投資家が保有する割合も低いです。経済力の方も安倍政権のアベノミクスで持ち直し、外国人投資家たちが予想するその国の財政破綻リスクを物語るCDSクレジット・デフォルト・スワップ)もさらに低くなりました。税収増加によるPB改善だけではなく債務残高対名目GDP比も収束傾向です。

日本が財政破綻に陥る危険性はかなり低いと見ていいでしょう。

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「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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