新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

雇用維持と防貧という国家の責務を果たせ

貧困・雇用・格差問題 」編の締めくくりと同時に、この数ヵ月で顕著になってきた景気減速の動きへの対策について話していきます。

日本は過去四半世紀近くも経済活動を低迷させ続け、その間の経済成長率が世界最下位というとんでもない記録をつくってしまいました。かつては世界中から高い評価を得て市場を席捲した日本の自動車や電機産業が中国などのメーカーにシェアを奪われた上に、長期の経済低迷が雇用の不安定化と低賃金化を招きました。このことが日本国民の低所得化を拡大していくことになります。

このブログサイトで何度も批判し続けてきましたが、このような状況に陥った第一の原因は金融政策への無理解です。金融政策は民間企業の投資意欲を左右する重要なものですが、政治家のみならず多くの国民に理解されていません。1990年代に日銀の三重野康総裁が行った金融引き締めが、企業の投資を一気に冷え込ませ、中小企業を中心に資金繰り悪化で倒産や廃業へと追い込まれていきます。銀行の貸し渋りが問題になったこともあります。雇用は人に対する大型投資であると云われており、金融引き締めは雇用悪化と不安定化に直結するのです。

「失われた20年」で露呈した高度成長期型社会保障制度の限界 」という記事の中でも述べましたが、金融政策は雇用維持や防貧政策の第一手段であり、最初期段階のセーフティネットです。失業手当の給付や職業訓練、そして貧困政策の最終手段である生活保護に先立ちます。金融緩和政策で雇用の最大化を計って、失業の発生を防止し、人々が勤労者として自立した生活を送れるようにしていかねばなりません。
しかしながらいくら景気が良くても、様々な理由で就労できない人も存在しますので、そういう人たちに社会保障制度による支援を行っていく必要があります。十分な給付を行うためにも、民間企業の収益を伸ばし、多く税を支払ってもらわなくてはなりません。

このブログサイトで訴え続けていることは国全体の経済という基盤を強化し、国民の厚生福利を最大化させるべきだということです。雇用の安定と防貧は国家の重大責務のひとつであることは言うまでもないことです。そのための政策手段を広く多くの人々に紹介するために、このブログサイトを開設しました。

冒頭で述べたように2019年初頭から景気悪化の兆候が日本でも現れかけています。原因はこれまで世界経済の大きな牽引力のひとつとなるまで急成長してきた中国の経済状況が怪しくなってきたことや、アメリカのパウエルFRB議長が指揮をとっている金融政策の態度があやふやであること、EU圏の経済不安定化によるものでしょう。リーマンショックレベルの激しい需要ショックが発生し、その津波が日本へも襲来する危険性がかなり高まっています。ここ6年近く堅調であった日本の民間投資活発化や雇用改善の動きがパタリと停まり、多くの人々が職を失い、収入が絶たれるような事態が発生するといった事態に備えておかねばなりません。
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消費税率10%引き上げも即時中止すべきでしょう。

先日自分のツイッターで述べたことですが、もし仮にリーマンショッククラスの経済危機が訪れたときに、日本が採るべき自衛手段は次のとおりです。

1 ここ最近消極的な態度を見せがちだった日銀の金融緩和政策を再強化する。追加緩和も実施する。
2 相変わらず鈍いままの一般消費のテコ入れをすべく、臨時給付金の支給も検討する。財源は量的緩和政策で積み上げたマネタリーベースの一部や国債新規発行とその日銀買受による財政ファイナンスで調達。いわゆるヘリマネ給付金。
3 消費税率10%引き上げ中止
4 建設需要落ち込みに備え、防災強化やインフラ整備といった公共事業を再度拡充することも視野に入れる。ただし建設会社の長期視野に基づく雇用計画や設備投資計画に配慮し、不足分の需要を埋める範囲内の発注にとどめる。(現在の建設業界の人手不足状態が続くならば土木公共事業の拡大はしない)

といったところです。これらは応急処置といえるものです。

こうした危機的状況が近づいているにも関わらず、生活弱者の味方を標榜する左派系野党は空疎な安倍政権非難を繰り返すばかりで、何の防衛策を示そうとしません。消費税率10%引き上げ凍結や給付付き税控除の実現といった法案を提出するような行動をしないのです。
あとネット界隈をみますと、金融緩和政策を否定した上に、社会保障給付削減を唱えているような人たちが相変わらず存在します。さらに「物価が上がらないからアベノミクス失敗ダー」「銀行が潰れたらどうするんダー」という幼稚かつ近視野的な発言をする人も目立ちます。こういう人たちは国家財政破綻ハイパーインフレの発生ばかりを気にしますが、同じく経済活動をマヒさせ、国民生活を破壊する恐慌の危険についてはまったく無頓着です。

何度かここで日本がハイパーインフレに見舞われる危険性は高くないことを説明してきましたが、恐慌は世界規模で十数年おきに発生しています。日本はファーストインパクトである1990年代のバブル景気崩壊と、セカンドインパクトであるリーマンショックという二回の大きな経済ショックに見舞われており、その度に経済体力を消耗させてきました。それが原因で国家財政も悪化します。

再びサードインパクトというべき恐慌に日本が見舞われ、民間企業の倒産・廃業や雇用再悪化を招いた場合、その対処が悪いと税収の落ち込みで国家財政破綻リスクを高めることになるでしょう。民間の経済力がボロボロですと国家財政の再建も不可能です。

それでも国家財政のことしか頭にない人が後を絶ちませんが、倒産・廃業した会社やホームレスから税金を徴収することは不可能です。これで国家財政再建ができるかどうか考えてみるといいでしょう。

日本の主流派(?)経済学者やら、評論家、政治家・官僚・マスコミは経済や雇用悪化を自然現象やら運のせいだと言いたがる人が多いです。大量に失業者が発生するような事態になっても傍観者のように突っ立って他人事のように「~が悪い」とか「~はバカだ」と他人を貶しているだけという者もいます。それでしたら経済学なんかいらない学問でしょう。国会でだらだらと国民の生活に関係のない難癖ばかりをつける政党や議員、マスコミやネット上で蘊蓄垂れるだけの人間はこの世に必要ではありませんし、邪魔になるだけです。いなくなった方が公益となるでしょう。

最後にかなり過激な発言をしましたが、「貧困・雇用・格差問題 」編はひとまずお開きとします。次回以降からいよいよ「ベーシックインカム構想」編です。お後がよろしいようで。

こちらでも政治等に関する記事を書いています。

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