新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

教育は貧困の連鎖を止める~教育は国家による投資~

貧困・雇用・格差問題」編はもうぼちぼち終わりにしたいと思っていますが、今回は防貧政策として有効だといわれる教育政策について取り上げます。これはよくいわれることですが、親の貧困が子どもに引き継がれてしまうという「貧困の連鎖」問題があります。これを防止する上で子育て支援策や教育支援策の重要性が唱えられます。
さらに教育はそれを受けた国民自身の能力を高め、生涯にわたる所得を増加させることが期待できますが、同時に国全体の産業競争力を高め経済力を強くする富国政策であり、国家的投資でもあります。貧困や雇用・経済格差問題だけではなく、国全体の経済力の底上げや国家財政問題を解決するためにも必要な政策といえましょう。

子どもを産み、育て、教育を受けさせることは親たちにとって大きなリスクを背負った巨額投資です。特に女性は自らの命を失う可能性がありながらも、痛みと苦しみに耐えながら子どもを産みます。そして20年近くに渡り、たくさんのお金を子どもに投じて育て上げていきます。このブログの「子育ては一家の巨額投資 」という記事でもそれを書きました。その中でも教育費にはこれだけお金がかかります。
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 参考 子ども養育応援便り様 「一人の子どもの出産から大学卒業までの総費用

にも関わらず日本は長年の経済低迷によって低所得世帯が拡大し、 日本の相対的貧困率は先進国35ヵ国中8番目の15.6%(2015年)と高い水準にあります。2015年の子どもの相対的貧困率は13.9%であり、子どものうち7人に1人は相対的貧困状態に置かれています。
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参考 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 小林庸平氏・名取淳氏

上の記事についてよれば
 1 貧困世帯の子どもの学力は10歳以降から低下し、固定化する
 2 学力の基礎となる基本的な生活習慣は小学校入学当初から差が大きい
 3 基本的な生活習慣が良いと学力も上昇しやすい
という分析結果が出たようです。

現与党の安倍政権が「人づくり革命」や「生産性革命」を標榜し、教育支援策を推し進めていますが、大阪府知事大阪市長を務められてこられた橋下徹氏も、教育バウチャーの他に保育バウチャーの導入も目指してきました。こういう姿勢は高く評価すべきことでしょう。
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あと上の三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめたレポートで貧困世帯の子どもたちの生活習慣の問題について重点的に取り上げていますが、そのひとつに朝ご飯をきちんと食べているかどうかも、子どもたちの学習態度や意欲に結びついています。そのために朝食を提供する学校が増えてきているようです。


上のニュースによれば朝食をきちんととっている生徒と、まったくとっていない生徒との間で国語と算数のテストの正答率が15%も差があったとのことです。

教育にもっと予算をかけろという話をすると「財源はどうなるの?」という疑問を持たれる方が多いかと思います。その調達方法としてもっとも優れているのは国債発行です。高く優れた教育を受けた人々は多くの富や財を産みだし、多くの税を支払ってくれることが期待されますが、そういう意味でいうと教育はコストパフォーマンスに優れた国家的投資だということになります。教育国債は高いリターンが望めます
現在学生支援機構による奨学金の返済負担が重く、多くの若い人たちを苦しめています。サラ金消費者金融ローン)と変わらないキリトリの厳しさだと評する人はたくさんいますが、学生個人に負債を発生させる形ではなく、国に負債を発生させる形にし、学生個人のリスク負担を軽減させる方策を用意すべきでしょう。

参考記事 島野美穂氏

ミナミの帝王」でも奨学金問題について取り上げていました。
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冒頭で述べたように国民に高いレベルの教育を受けさせることは生涯にわたって得られると期待される所得を伸ばします。ミルトン・フリードマン恒常所得仮説というものを唱えておりましたが、教育はこれを高める効果があるでしょう。

参考

高い教育を受けた人は自己肯定感や自信を高め、社会全体にもポジティブな影響を与えていくことになります。

さらに教育支援はそれを受けた人だけではなく、日本経済全体にも大きな益をもたらします。「貧困による教育格差は幼少期から 日本初のデータでわかった学力・生活習慣格差」のレポートに書かれているように、子どもの貧困は当事者だけの問題ではありません。それを放置すると将来的に40兆円以上の所得が減少するといわれています。

金融緩和政策や財政政策といったマクロ経済政策は国全体の供給力(=潜在GDP)の高さまで、需要を引き出すことは可能ですが、それ以上のことはできません。モノやサービスなどを生み出す供給力は労働力と労働時間、資本設備、天然資源の供給で決まってきますが、高度な教育はひとりの労働者の生産性を大きく高め、供給力を向上させることになります。将来の経済成長の原動力になるといっていいでしょう。

ですので国が国債を発行する形で国民の教育費を賄っていっても、十分なおつりがくるということになります。

次回はいよいよ「 貧困・雇用・格差問題 」編の締めくくりに入っていきます。

追記
参考記事の追加です。

こちらでも政治等に関する記事を書いています。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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