新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

自由と正義のためのベーシックインカム

政治や経済の話をするときに自由主義という言葉をよく耳にしますが、権力者の横暴を抑制し、国家が暴力や威嚇によって思想や言論を弾圧するといったことを排除するのはもちろんのこと、国民全体の利益に反する不合理な法規制を無くしていくことなどが政治的自由です。経済における自由主義は民間が政府の不当な干渉を受けることなく、商業や生産活動を行える社会を目指す考えです。
しかしながら政治的圧力や法規制を少なくすることだけで、私たちはほんとうに自由になれるのでしょうか?

私は自由を得るにはお金を持たねばならないと考えています。お金は自分が好きなものやサービスを買う権利書みたいなものです。他人に自分のために動いてもらうにもお金を払うという形で謝意を示さねばなりません。お金をたくさん持っている人はいろんなものやサービスを手に入れる自由を持っていますが、お金を持っていない人はその自由や権利がありません。そういう人はお金を持っている誰かのために奉仕し、自由や権利を譲ってもらわないといけないのです。
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私はここのブログサイトでデフレ不況の問題やそれを克服するためのリフレーション政策について多くの記事を書いてきております。デフレ不況のときは市中のお金の動きが極端に鈍り、また供給量(マネーサプライ)も減少するのですが、こうなってしまうと多くの人々にお金が行き届きにくくなってしまいます。そういうときはお金の希少価値がどんどん高まってしまい、人々はそれを手放そうとしなくなります。流動性の罠です。こうなってくると貴重なお金をたくさん持っている人の権力が絶大なものになります。

亡くなられた元通産官僚だった堺屋太一さんが仰っていたことですが、不況で国民がお金を持っていない状態が役人にとって一番おいしい状態です。なぜならば国民や民間企業が政治家や役人に「お金(財政政策)を出してほしい」とペコペコ頭を下げざる得なくなり、役人の利権が強化されるからです。

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デフレ不況下でブラック企業といわれるような会社やその経営者が跋扈する理由も、カネの力が強大になるからです。多くの求職者たちは無職で無収入のままでいるわけにはいきませんから、低い賃金や劣悪な労働条件の会社であっても我慢して就職しないといけません。生与殺奪の権を握ったブラック企業の経営者たちは働き口が少なく、転職したくてもできない従業員の弱みにつけ込むように、過重労働を強いたり、パワハラでシバキぬきます。

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デフレ不況は金をもっているブラック経営者の支配力を強化し、多くの就労者たちの自由や権利を奪っていくものです。同じ労働でも最も自由意志に近い形態がplayで、その次に使命感に基づくwark、そして隷属に近いのがlaborや骨折り、労苦、陣痛に値するフランス語のtravailとなりますが、デフレ不況下の労働はlaborとかtravailといえましょう。(某女性向け求人誌で「とらばーゆ」なんてのがありますが、求職する女性をSMプレイで調教する気でしょうか?)

前回の記事「正義のリスク 山口真帆さんや一色正春氏など 」で正義の行動をとる人が経済的に得をするどころか、これまで得ていた地位や名誉を放棄することになったり、転身や再就職がなかなか見つからず大きな苦労を背負うことになりがちだという話をしました。内部告発という行動ではなく、ひどく荒廃し腐敗した組織から退職といった形で抜け出すという方法であったとしても、被害を受けている側がさらなる大きな経済損失を覚悟の上で動かねばならないのです。そのため多くの人たちはどんなに理不尽で悪辣非道の限りを尽くされる職場であっても、完全に収入を絶たれて飢え死にする危険があるために、黙って耐え忍ぶ道を選んでしまいます。
逆をいえばブラック企業の経営者は従業員にかなり乱暴なことをやっても逃げ出さないことを知っているために、ますます横暴になり、組織の荒廃や腐敗がさらに進行してしまいます。

ひどいデフレ不況は自分にとって不適な職場を捨て、新たに最適な職場を探し選ぶ自由を奪います。逆に好況時で労働市場が売り手市場状態ですと、求職者は腐敗したブラック企業を捨て、ホワイトな職場へとどんどん移っていきます。その結果自浄作用を失ったブラック企業は市場から淘汰されて、労働者側にとって最適な労働環境で働くことができるようになります。

デフレ不況を克服する積極的な金融緩和や財政政策をフル動員させるリフレーション政策の徹底と共に、ベーシックインカムや給付付き税控除といった包括的現金給付制度の導入で最低限の生活費保障が行われれば、人々は自分にとってより最適な職場へ移る自由を得られます。不正が蔓延るブラック企業を告発するといった行動をとる人が増えれば社会全体の浄化や最適化も進むでしょう。

逆に従業員を雇う側の企業にとっても、自社にとって適切でない人材を退出させ、その人にとってより適切な職場に移ってもらうことを促せます。


ベーシックインカムが人々の自由を高めると共に、社会全体の最適化(アジャストadjust)を促進させることにつながるのではないでしょうか。

「自由と正義のベーシックインカム」です。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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