新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

国民のための財政政策になっているのか

現時点においてですが、前回書いたように自民党が消費税率10%引きあげ容認のまま突き進むことが濃厚な気配になっております。私はここのブログで何度か申し上げてきたように、財務省が消費税をはじめとする増税や国民生活に直結する予算の歳出削減を行うことに反対です。

安倍政権は2013年以降から異次元金融緩和政策を行い、雇用を大きく改善してきたことを高く評価しておりますが、2014年の消費税率8%引き上げをはじめ、財政を抑制気味にしてきております。これについては不満を持ちつつも、これまで強くは非難してきませんでした。現在も含めて金融政策に精通した政治家は日本において数名ほどしかいない状態で、経済政策や外交でこの政権を超えそうな存在が見当たらない状況です。ですので私はこれまで財政政策に不満を持ちつつも安倍政権を支持し続けてきました。

しかしながら、もし仮にこの政権が消費税率10%引き上げを容認したまま、突っ切るのであれば、今までのアベノミクスはぶち壊しになってしまう可能性が高いでしょう。恐らく日本の経済が失速すると共に、安倍政権も瓦解していくと思われますし、私も支持し続けられません。

そういう中で山本太郎氏が反消費税・反緊縮財政を掲げ、れいわ新選組を立ちあげ、あちこちで演説活動を行っております。彼は薔薇マークキャンペーンが推す候補者の一人です。この流れに三橋貴明氏や鳩山由紀夫氏までのっかってきました。
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れいわ新選組を旗揚げした山本太郎

消費税増税や緊縮財政に反対する人たちにとっては、山本太郎氏らか唱えている主張や運動は非常に魅惑的に映るかと思われます。山本太郎氏は松尾匡さんの指導もあってか、財政政策だけではなく金融緩和政策についての理解もまずまずではあります。私もリフレ派といわれるグループの一員ですので、「山本太郎さんと考えが近いでしょ」と思われる人が多いかも知れません。

しかしながら私は次のような理由で薔薇マークキャンペーンやMMTブームとは一線を引いています。
第一に彼らは金融緩和政策で企業にお金を遣わせることを促し、所得分配を進めようという考えが薄く、財政政策拡大にしか興味を持とうとしない態度である点であるです。それがさらに極端になると政府が財政赤字を出すのは当然だという極論に至ります。国家財政が赤字になれば国民が豊かになれるなどという保障はどこにもありません
第二に薔薇マークキャンペーンやMMT国家社会主義つまりは官僚主義との親和性が高いことです。
積極財政といえば国が国民にどんどんお金をばら撒いてくれるというイメージを抱きがちですが、その財政政策の中身が政治家や官僚そして特定の団体や企業・業界などに偏ったもので、利権誘導に悪用されたならば、逆に国家による国民からの富や財の収奪や濫用につながりかねません。その例が戦前に高橋是清蔵相が暗殺された後の馬場鍈一財政です。軍部の言いなりで財政を肥大化させ、それがもとで国債の濫発や高インフレと増税を招き、庶民の生活を苦しめることになったのです。
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財務省増税と緊縮財政を狙っていると云われますが、それは表向きで実は自分たちの利権誘導に利用できそうな予算拡大を望んでいる可能性が高いです。そうした財政膨張がほんとうに国民の生活福祉を向上させるのでしょうか?

山本太郎氏や三橋貴明氏は国民の生活を豊かにするために積極財政をと訴えていますが、その財政政策の中身がかつての田中角栄経世会が牛耳っていた時代の自民党のような土木建設公共事業や農協などに偏った財政政策に傾くのであれば馬場鍈一財政の二の舞を踏むことにならないかりかねません。

さらに薔薇マークキャンペーンについていうと、その活動内容が発足当初に掲げた旗印と乖離しかけています。
松尾匡氏は金融緩和政策と財政政策を合わせた景気浮揚策であるリフレーション政策の考えを左派も理解して、アベノミクスを超えようという考えで、このキャンペーンをはじめたのですが、肝心の薔薇マークキャンペーンの認定議員や選挙候補者たちが、反リフレ・反金融緩和政策を唱えているような共産党候補者を選定してしまっております。逆に消費税増税に反対し、金融政策に理解がある議員が多い日本維新の会に対し、批判的な態度をとっていたりします。これでは今までの左派とまったく代り映えのしない活動だと思われても文句のいいようがないでしょう。結局薔薇マークキャンペーンは経済や国民の生活よりも、自分たちの政治イデオロギーが第一の運動なのです。

 薔薇マークキャンペーンについての批判

わりと金融緩和政策に対する理解があると思われている山本太郎氏についても、やはり民間の大企業が貯えている内部留保に課税せよといった発言をしています。これについても一見生活者よりに見える発言ですが、会計をやっている人から見たらかなり的外れな話だということもここで説明しました。


本来リフレ派といわれるグループが主張するのは、政府が民間企業から税を取り立てて、そのカネをバラ撒いたり、最低賃金を強引に引き上げるといった「北風政策」で所得(再)分配を進めるのではなく、金融緩和政策で企業に投資というかたちでお金をどんどん遣わせ、人に対する投資である雇用も拡大させることで所得分配を進める「太陽政策」を採るべきだというものです。山本太郎氏もまた従来左派の北風政策的なやり方を訴えかけていたりするのです。こういったところに元の地金が出てしまっているのです。

薔薇マークキャンペーンは「国民の生活のために」という旗印を掲げていても、やっている行動がただ時の政権である安倍内閣を打倒することや、肝心の低所得者層を中心とする層からも見放されている左派政党の生き残りが目的化しているようなものであり、非常に欺瞞に満ちたものです。MMTブームについてもやがて国民の生活福祉向上からかけ離れ、ただ財政を膨張させることだけが目的化したものになりかねません。

国民の生活福祉の向上はモノやサービスといった財を生産・供給し、雇用というかたちで所得分配を進める民間企業の発展が前提です。それを忘れた経済政策キャンペーンは必ず挫折することでしょう。

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