新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

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小売販売業者や飲食業界を圧し潰す消費税増税と軽減税率

今月10月1日より消費税の税率が10%に上がると共に、公明党などが導入を求めていた軽減税率もはじまりました。私はまだ景気回復の途上というべき段階で消費税の増税を行うことはずっと反対してきましたし、煩雑極まりない軽減税率の愚劣さについては数年以上も前から批判してきました。私のような増税反対派だけではなく、消費税増税賛成派からも反対を唱えている人が多いです。経済学者の圧倒的多数が軽減税率反対ではないでしょうか。

 

軽減税率の問題を書きあげるときりがないのですが、まずどの品目が軽減税率適用なのかが非常にわかりづらく、線引きがつけにくいことをはじめ、多種の商品を取り扱う小売・流通業者にとって税申告や精算作業の煩雑化による負担も増加します。新たに軽減税率対応のPOSを導入する手間や負担はバカになりません。一応個人商店などに対しては軽減税率対応レジなどを導入するための補助金制度が設けられていたようですが、それだけでは不足し、新たな設備投資費ができないという理由で廃業を決めた個人商店や飲食店が多く出ています。

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地方においては10月の増税と軽減税率実施を機に百貨店やスーパーを閉店させる動きも目立ちました。

このことについては「新しいレジやPOSへの投資ができないほど売り上げや利益が出てない業者や店主が高齢で後継者もいないような店は消費税の増税や軽減税率の導入がなくても数年で廃業・閉店していただろう」という話をする人がいますが、私は大手の小売販売業者や飲食店チェーンでさえも無関係だとはいえないと思います。

日本は過去四半世紀以上にも及ぶデフレ状態に置かれており、小売販売業者や飲食業者は自社の利益をギリギリまで切り詰めて、商品を廉価販売し続けてきました。ペラペラに薄い利益率で稼いだ収益の中から、消費税の増税や軽減税率に対応するためのコストを捻出しないといけないのです。消費税の増税をすべきだと主張する中嶋よしふみ氏でさえも「軽減税率倒産」の発生を危惧しています。

なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか (1/8) - ITmedia ビジネスオンライン

 

かなり大袈裟な想像になりますが、地方だけではなく都市の一部でも百貨店・スーパー・飲食店が消え去って、寂れかえってしまう地域があちこちに現れるかも知れません。買い物難民といわれる人たちが多く発生する恐れもあります。ある日本在住のフランス人はパリにはレストランが少なく東京にはあふれているのは19・6%という高い消費税が一因だろうという話をしています。日本はまだ消費税率10%ですが、このまま20%、30%と上がっていくと飲食業界が一気に衰退していくかも知れません。

人間が生きていく上で最低限必要な食品や生活用品を扱う小売販売業や飲食業界は不況に強い業種だと言われおり、長く続いた不況や雇用低迷の中で、これらの業界は雇用の受け皿となっていました。このような業界までもどんどん潰れていってしまうと、再び日本は失業者の増加に悩まされることになりそうです。

にも関わらず消費税をもっと上げないと国家財政が破綻してしまうと言っているような人が絶えません。私はこういう人たちに言いたいですが、税を負担するのは民間の個人や企業です。民間が潰れてしまえば税も支払えないのです。民間の経済力を疲弊させてしまうようなことばかりをしてきた財務省や日銀の国家社会主義的な経済観や財政観に対する怨嗟の気持ちが強まるばかりです。

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