新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

現実味が出てきてしまった令和恐慌

 コロナウィルスの猛威とその抑制を引き換えにした経済活動の自粛・抑制によって、欧米では経済マヒと言っていい状況に陥っています。

アメリカではなんとコロナ禍で失業率が30%超ととんでもない状況に陥っています。コロナショックといえば部品供給停止や従業員の感染防止などの理由で操業停止をせざるえない製造業をはじめ、外出や渡航自粛の影響を直撃した観光や飲食業、興行、輸送業といった産業が真っ先に打撃を受けたことはすぐに想像できますが、シリコンバレーのハイテク産業など一見無関係そうに見える業種にまで従業員(一時)解雇や新規採用内定取り消しという事態が拡がっています。この惨状は恐慌といっていい状態です。

 

しかしながら恐慌といってもサブプライムローンの焦げ付きを発端とする金融危機金本位制の矛盾と破綻がもたらした1929年の世界大恐慌とは原因や性格がまったく異なります。2020年4月3日現在においてですが、銀行や証券会社などの金融機関が危なくなっているというところまでには至っていません。今回の場合は銀行や証券会社など金融機関の破綻から生ずる民間企業や個人への資金供給が停まってしまうことが発端ではなく、政府が非常時体制で経済活動を抑制しているためです。このことを留意する必要はありますが、それでも今回の対処策はサブプライムローンショックのときや世界大恐慌のときと同じようなもの、つまりは大胆な財政出動や金融緩和政策の決行です。いまアメリカやヨーロッパでは小さな政府主義や厳しい財政規律路線をとってきた国々までそれを行っています。

 

日本も当然のことながらコロナ禍の影響で経済活動の抑制を余儀なくされています。やはりアメリカやヨーロッパ諸国のように民間事業者(個人事業者も含む)は需要急減や操業停止、供給停止などの理由で休業を余儀なくされたり、売り上げの急減や資金繰り悪化に直面して事業存続の危機に立たされているところが少なくありません。雇用の方も危なくなってきます。

 

しかしながら日本の場合、アメリカやヨーロッパと異なり、2018年末以降からはじまった景気減速の動きと消費税10%増税ショックが重なり民間事業者や個人は三重苦の経済危機に見舞われています。

やはり日本でも多くの民間事業者が急激な減収減益と資金繰り悪化で事業廃止や経営破綻に追い込まれ、新卒学生の就職内定が取り消されるなどの動きがみられていますが、原因はコロナ禍だけではなく、その直前の消費税増税でモノやサービスがぱったり売れなくなってしまうといった声が事業主から出ていました。異変はコロナショック前から起き始めていたのです。

 

日本の場合はコロナ恐慌というよりも、令和恐慌という言い方の方がいいかも知れません。コロナウィルスの感染拡大が収束した後も民間の事業縮小や雇用悪化が止まらないということになりかねないのです。

 

このブログで何回かコロナショックへと対応と中~長期の景気悪化への対応は切り分けて考えるべきだと申し上げてきました。そしてこのふたつを同時にやらないといけないとも強調しています。

残念ながら日本の政府や財務省経済産業省などの官僚らをみていると、いま起きているコロナショックだけではなくそれ以前からの需要萎縮進行によって令和恐慌に陥りかねないという危機意識を持っているとは感じられないのです。それこそ失笑を買うような旅行券やお肉券、お魚券などといったクーポン券とか、対象者が狭く申請主義的な現金給付などせこい内容の愚策を連発する一方で、消費税減税を否定するなど絶望的な態度しか見せていません。

 

この調子でいくと、多くの民間事業者はコロナショック収束後の需要回復を期待できずに事業再開をあきらめてしまう動きが加速しかねません。このまま令和恐慌へとフェードインしてしまうでしょう。

 

いまのコロナショックへの対処だけではなく、中長期の経済成長ビジョンを政府・中央銀行が示していかないと目も当てられない状況になりそうです。

 

なお民間企業の資金詰まりを防止する恐慌のときの金融緩和政策については後日別ブログ(新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~)で書くつもりでいます。 

 

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