新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

1990年代から負債が膨らみ続ける国家財政 ~小渕政権と宮澤喜一財相のオールドケインジアン的経済政策~

~今回から通常記事再開です~
現在の経済・政治情勢やベーシックインカム・給付付き税控除等については下記ブログで記事を書きます。

~以下本文~

下の記事で橋本龍太郎政権が消費税5%引き上げと歳出削減による緊縮財政によって日本経済の失速に止めを刺してしまい、その結果国民から激しい非難を浴びてこの政権が倒閣したことを書きました。

今回はその続きで小渕恵三政権とその財務大臣を務めた宮澤喜一が行ったオールドケインジアン財政出動政策と国家財政問題について取り上げます。

橋本政権時代にも消費税引き上げによる景気悪化への対処として高所得者や企業向けの減税を実施していますが、それでも景気悪化の歯止めがかからず日本経済は本格的なデフレへと突き進みます。バブル崩壊によるデフレ経済は日銀三重野康総裁が急激な金融引き締めを行ったことが元凶ですが、それをいっそうひどくし日本病化させてしまったのが橋本緊縮財政です。

この失策の責任を取るかたちで橋本龍太郎内閣は総辞職し、同じ経世会系の小渕恵三に政権を譲ることになります。小渕首相は経済政策通といわれていた宮澤喜一財務大臣に任命し、当時危ぶまれていた金融危機への対応や景気回復策を彼に委ねます。

当然のことながら財政は緊縮から積極に転じないといけないことになります。小渕政権と宮澤財務相は橋本内閣が打ち出した赤字国債の発行を制限している財政構造改革法(財革法)の凍結し、大規模な財政出動による景気回復策を進めていきました。連立を組んだ公明党の提案を受け入れ、総額7千億円の地域振興券の発行し、他にも児童手当の拡充や中小企業向けの貸し渋り対策としての特別信用保証制度の創設・拡大、整備新幹線の建設促進などを連発します。

また小渕政権発足当時は日本長期信用銀行などをはじめとする多くの金融機関が経営危機に陥っていました。それが深刻な金融不安を招き「日本発の世界恐慌」になるやも知れないと云われていた状況です。小渕政権は民主党をはじめとする野党が打ち出していた金融再生法案を丸呑みするのと引き換えに、経営危機に見舞われていた日本長期信用銀行へ60兆円もの公的資金を投入します。

この措置によって金融危機を回避し、景気の落ち込みにも歯止めがかかります。
しかしながらその一方で国の累積債務は600兆円に突入し、小渕首相は生前自嘲気味に「オレは世界一の借金王だ」などとこぼしています。
このため小渕首相は国家財政悪化の張本人のように見られてしまうようになるのですが、その元凶は氏ではありません。三重野日銀総裁橋本龍太郎にあります。

この時期を境に日本経済は民間の自発的な投資ではなく、国家の財政出動や負債の発生に依存するような形に傾倒していきます。銀行も民間企業への融資で収益を稼ぐのではなく、国や地方公共団体が発行する公債に依存するかたちとなります。「お金が発生する仕組み」編でも述べたように、貨幣は信用創造市中銀行が民間企業に融資する形で発生しますが、国が民間の代わりに信用創造をするような状況を生んだのでした
つまりは国がどんどん借金をしていかなと、お金が生まれなくなり、経済活動が麻痺してしまう構造です。

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あるいは民間部門が発生させた負債をどんどん国へと移していったのが1990年代以降の日本経済といえましょう。
バランスシートの考え方によりますと誰かが負債を発生させた場合、誰かが資産を得ることになります。シーソーと同じです。日本の国全体を家計・企業(民間非金融部門)・政府・海外の4部門に分けたとしたら、いずれの部門が負債を発生させたときに、どこかの部門が資産を得るという仕組みです。よくマンガやアニメで火の点いた爆弾をたらい回しにする場面がありますが、それと同じです。バブル崩壊までは企業部門が多くの負債を発生させていましたが、それが政府部門に移ったとみていいでしょう。

橋本政権の増税・緊縮財政は国家財政再建のために進められましたが、その目的とは逆に国家財政の悪化はさらに深刻化し、日本経済はアベノミクス始動までの20年間低迷し続けたのです。
もっといえば日本経済の社会主義化が進行した20年だったともいえます。民間企業が国の公共事業や補助金に依存するようになったり、銀行が民間企業融資ではなく公債が収益源の柱になってしまうというのは社会主義的だといえるのではないでしょうか。これは極めて異常事態だといえましょう。

参考

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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