新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

日本の経済的地位低下が遠因した尖閣諸島問題

菅直人という人間は民主党がまだ野党時代だったときは市民派政治家として自民党政権や官僚に対し非常に勇ましく、闘争心を剥き出しにして吠え立て噛みつきまくっていました。その子分が長妻昭でやはり同じく自ら「官僚に最も嫌われている政治家」を標榜して名をあげています。しかし彼らは与党政治家になったとたんにボロをどんどん出し続け、虚勢ばかりの無能政治家であることが露呈していきます。今にして思うと彼らの自分の持つ能力への自信のなさが与党や官僚に対する攻撃的な態度につながり、虚栄心だけが肥大した卑しい小男に過ぎなかったのかも知れません。菅政権で国土交通大臣であった前原誠司も同種の人間だったように思われます。彼はライブドア偽メール事件で見せたように非常にナイーヴな男で、その政治家人生は易々と敵方の謀略や罠に嵌められてしまうことの連続でした。

常に官僚に対し喧嘩腰でいた菅直人ですが、前回述べたとおり国会で自民側からの乗数効果質問に答えられず、大恥をかかされたことを機に財務官僚の「飼育政治家」となっていまいます。敵方に弱みを簡単に握られてしまう菅の浅はかさや薄っぺらさがもたらしたものでした。
菅が虚勢を張っているだけの頭が悪い無能な男でしかないということを見破っていたのは日本の官僚だけではありません。老獪極まりない中国の権力者たちもそれに気がついていたのではないでしょうか。威勢ばかりはいいが勝負勘がなく喧嘩に弱い前原誠司の性格も中国側は承知だったことでしょう。

2010年9月7日尖閣諸島付近の海域をパトロール中だった日本の海上保安庁巡視船が中国の民兵が乗り込んでいた不審漁船に体当たり攻撃をされるという事件が発生します。
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海上保安庁前原誠司国土交通大臣(大臣)から直接の命を受け、不審船の乗組員を公務執行妨害で逮捕し那覇地検に送検しました。事件当初は菅直人総理も「わが国の法律に基づいて、厳正に対応していく」「こちらから折れる必要はない」と外務省幹部に檄を飛ばしていました。極めて強腰です。

中国側は「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土」と言い張りながら、日本側の措置に対し猛抗議をし、拘留中であった漁船の船長・乗組員の釈放を求めてきました。当初は前原国土交通大臣岡田克也外務大臣らが「尖閣に日本の領土問題はない。議論の余地はない」と述べていたものの、中国側が政府間交流や民間の観光の中止・停止といった対抗措置だけではなく、レアアースの禁輸による貿易制裁まで行ってきます。レアアースは当時日本の自動車メーカーにとって頼み綱だったハイブリッドカーや電機製品の製造に欠かせないものでしたが、それは中国国内でしか発掘されないものでした。思い切り中国側はそうした日本産業界の実情を把握し秘孔を突いてきたわけです。
さらに中国は当時駐在していた日本人4人を「許可なく軍事管理区域を撮影した」として身柄拘束をしてきます。

こうした中国側の恫喝に慌てたのか、菅首相仙谷由人官房長官は不審漁船船長の拘留期限がまだ5日残っているにも関わらず釈放してしまいます。これに対し方々から菅や仙谷の対応に「弱腰外交だ」という非難の声が上がり、この二人は「売国奴」と呼ばれるようになります。渋谷などの街頭で多くの市民が集まり日の丸の旗を掲げて抗議デモを起こしました。
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ウィキペギアの投稿画像より 尖閣諸島中国漁船衝突事件 - Wikipedia

私も近所のスーパーで買い物をしていたとき、中年女性が自分の夫に「これ中国産よね。私中国嫌いだから買いたくないわ。」などと言っているのを耳にしたことがあります。この怒りは一部のネット右翼や右派活動家だけではなく、ごく一般の人にまで拡がっていたということです。

不審漁船船長・乗組員を釈放した後も中国側の恫喝は弱まるどころか、どんどんヒートアップしていきます。
温家宝中国首相の国連での発言で国際社会に「日中間に領土問題あり」との誤解が広がった上に、尖閣諸島の日本領海内での中国側の漁業が放置されてしいます。逆に日本の漁船は安心して尖閣諸島周辺で操業できなくなってしまいました。おまけに中国側はさらに図に乗って日本側に不審漁船船長・乗組員を拘束したことへの謝罪と賠償まで求めてくる有様です。

さらに民主党政権は「中国側の配慮から」などと言って海上保安庁の巡視艇が中国側の不審漁船に体当たり攻撃をされている様子を写した動画が公開されないままでした。この動画が早い時点で公開されていれば中国側の不審漁船が行った蛮行ぶりが一目瞭然で伝わり、国際世論が日本側へ好意を向けた可能性があったはずです。このことに義憤を持たれた海上保安庁職員でHN・sengoku38こと一色正春氏がネットカフェのPCより海上保安庁で保管されていた事件当時の動画を配信し、大反響を得ました。
一色氏の行動はまさに勇気ある内部告発者であり憂国の士(おとこ・サムライ)と賞賛すべきでしょう。

菅直人仙谷由人がこんな対応してしまったのは民主党代表選挙を控え、厄介事から逃避したかったからではないかと思われます。譲歩すれば中国側もこれ以上反発しないだろうという甘い予想に基づくものでした。菅は土壇場で面倒事や厄介事から逃げてしまう性格で「ズル菅」と呼ばれています。

この事件以後も日本は中国のみならず、韓国やロシア・北朝鮮などとも領土問題や外交上の摩擦を招くことになりました。鳩山由紀夫政権時代に引き起こした普天間基地移設問題でオバマ大統領を怒らせ、日米関係がおかしくなっており、日本を取り巻く国際情勢は八方塞がり・四面楚歌になってしまいます。

ここまでずっと政治的問題について述べてきましたが、中国や韓国・北朝鮮・ロシアが日本に対し、様々な挑発行為をしはじめた背景を経済面で話しておきましょう。
日本はリーマンショックを含む2007~2009年にかけての大不況によって、いっそう経済力を衰えさせることになりました。当時アメリカをはじめ多くの他国は金融緩和を必死に行っていたのですが、日銀の白川方明総裁は相変わらず極度な金融引き締め政策を続けています。投機家たちは円を高騰するどんどん買い漁り円高がますます加速していきます。日本の花形産業であった自動車や電機産業はズタボロにされました。
そんな最中に中国は他国より抜きん出て急速な経済成長期を迎えます。日本の国内総生産アメリカに次ぐ世界第2位の座を42年に渡って守り続けてきましたが、2010年にそれを中国に明け渡すことになってしまいました。

国防力はその国の経済力とくに工業力に比例します。現代の防衛は数多くのハイテク兵器が大量に導入されており、労働集約型から資本集約型になってきているといわれています。つまりは高度な工業技術や電子機械産業がなければ国防が成り立たないのです。かつて日本はそうした分野で世界トップレベルだったのですが、日本がデフレで苦しみもがいている間に中国や韓国もどんどん技術力を上げていったのです。

また日本の防衛予算はGDP1%以内という枠で縛られていますから、デフレによるGDP低下は当然防衛予算の縮小となります。逆に中国が経済成長と工業技術成長をどんどん続けることによって軍事力を質・量ともに増強し続けました。尖閣諸島漁船襲撃事件が起きた2010年は中国が日本を経済面と軍事面で追い抜いた年だったのです。
韓国もヒュンダイなどの自動車メーカーやサムスンなどの電機メーカーが成長し、日本に代わって世界の自動車・電機製品市場を席捲するようになっていきます。彼らは「日本はもうライバルではない」とまでいって見下しはじめます。

日本の民主党政権時代に起きた外交・防衛上のトラブルは経済力の国際的地位低下と決して無縁でなかったことに注意が必要です。

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

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