リフレーション政策を実行する上で重要な手法となっているものはコミットメント(誓約)です。
ゲーム理論とコミットメントの効果について解説したサイトを紹介しましょう。
参考 3日で学ぶ交渉術!ゲーム理論入門様
参考サイトに書かれていることはコミットメントという形であえて自分がこれから行う選択や行動を公の場で表明して自ら縛ることによって、相手のとる選択や行動を変えさせてしまうという戦法です。
ウィキペディアでは
「合理的な一人の人間が意思決定する場合には選択肢が広いほど良いのに対して、複数の主体(個人・企業・政府など)が相手の出方を伺いながら行動する場合には、選択の幅を狭め、自分にとって最適な行動がとれないようにすること(=コミットメント)によってかえって得をする場合がある」
と記述されています。駆け引き相手に対して自分が宣言したことが単なる口約束や脅しではなく「間違いなくやる気だ」と信じ込ませて、相手の出方を自分が有利な方に変えてしまうわけです。
上の参考サイトさんではビール会社の価格競争に例えていますが、こちらはタヌキさんとキツネさんに置き換えます。
タヌキさんの会社の商品は他のお店よりも低価格でものを売っており、お客さんがその商品をたくさん買っていきました。キツネさんの会社はそれを見て新規参入でタヌキさんの会社より安い商品をつくってお客さんを奪えないかと考えます。しかしタヌキさんの会社がもっと値下げをして対抗してくるでしょう。キツネさんの会社がタヌキさんの会社の商品よりももっと安くしようと思ったら採算割れして大損しそうです。キツネさんはおとなしく値引き合戦に参加しない方が合理的な行動にみえます。
しかしキツネさんはタヌキさんにある心理戦を仕掛けることにしました。
キツネさんは「タヌキさんが対抗でもっと安い商品をつくってきても、ウチは赤字覚悟でもっと安い商品を作ってみせる。撤退など絶対にしない!」と宣告します。しかしそれだけではタヌキさんは「どうせキツネの言うことは”言うだけ番長”だろう。ウチ以上に安売りなんかできっこない。」と思うことでしょう。
キツネさんは口だけでは信用されないので、「その商品の試作品はもうできていて、大規模な投資を行いもう生産をはじめた。後にも先にももう退けない」と背水の陣で臨む覚悟を見せました。
「キツネさんは本気だ」と信じ込んだタヌキさんは今売っている商品以下の値下げを諦めます。
キツネさんは「赤字でも事業の撤退をしない」とコミットメントしたことによってタヌキさんの予想が変わり、さらなる値引きから価格維持へと行動を変化させます。結果的にキツネさんは多くの商品を売って得をしました。
キツネさんはコミットメントであえて合理的でない行動である「赤字でも撤退しない」という選択肢だけに固定して、タヌキさんの判断や選択肢を変えてしまいます。結果的にタヌキさんはキツネさんの思うツボといった行動をとってキツネさんが勝負に勝つという結果となります。
よく「指切り拳万 嘘ついたら針千本呑ます 指切った」といいますが、これは遊郭のお女郎さんがお客に誠意を示し信じ込ませるために自分の指を切るという風習がありました。(極道の世界にもありますが・・・・) コミットメントは「指切り」と同じ意味があります。
- 個別の銀行が破綻しそうなとき、金融システムや経済の安定化のためには政府が経営不安に陥った銀行を公的資金投入により救済する必要がある。しかし、銀行が経営不振に陥る前に政府が「破綻した銀行は救済しない」と宣言しておくことによって、銀行の経営規律が守られ、かえって金融恐慌が起こりにくくなるかもしれない。
あと中国の三国志に登場する軍師・諸葛亮孔明が自分の愛弟子であった馬謖を「勝手に命令に背いたために自軍を敗北に導いた」として斬り落とす話があり、「泣いて馬謖を斬る」という諺にもなっています。孔明が泣く泣く馬謖を斬る決断をしたことによって、他の兵たちにも「命令に背けば斬りおとす」という予想をつくりました。これもゲーム理論の手法に通ずると評した人もいます。
j次回はこのコミットメント効果とインフレターゲットに結び付けていきます。
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