前回は日本の社会保障・福祉・医療制度の沿革について、大雑把に説明させていただきました。
今回はその制度体系についてです。
これまで強調してきましたとおり、社会保障と福祉・医療は厳密にいうと異なります。前者は所得保障制度で現金の給付が中心です。後者はサービスの支給が主です。この線引きは少々曖昧で人々の理解を混乱させていますが、頭に入れておいてください。それと財源が国や地方自治体の一般財源から賄われるのか、保険方式を採っているのかという点や、措置方式か利用者がサービスを買うバウチャー方式か、給付金もしくはサービスの受給資格が福祉事務所などの判断で決められるのか、無条件給付なのかということも知っておく必要があります。
社会保障制度といえるものは以下の制度です。
まずは社会保険制度からです。これは皆が事前に保険料を出し合い、法で定められた支給要件を満たしたときに無条件給付されるものです。
・健康保険制度(公的医療保険)
・雇用保険制度
・労働災害保険制度
・介護保険制度
次に社会扶助というものがあります。こちらは事前に利用者が保険料を負担するといった必要がなく、公費(国や地方自治体の一般会計)で給付費が賄われます。資産や所得など受給資格認定が必要な公的扶助と条件を満たせば誰でも受給できる社会手当があります。
公的扶助
・生活保護制度 (生活扶助、住宅扶助、医療扶助、教育扶助) ←福祉事務所による受給認定調査あり
社会手当
・児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当 ←受給要件を満たせば無条件給付
もし将来ベーシックインカムが実現したとすれば社会手当のひとつになるかも知れません。(制度名は基本生活手当とか) 生活保護や各種社会手当もBIと併統合される可能性もあるでしょう。(障害児および特別障害児児童手当はBIの別オプションが望ましい)
上で述べたものが社会保障制度です。
そして援助サービスを主とした社会福祉事業の例は以下のとおりです。
児童福祉法による福祉事業
・児童相談所、児童委員
身体障害者福祉法による福祉事業
・身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業、身体障害者相談支援事業、身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業又は介助犬訓練事業若しくは聴導犬訓練事業、補装具製作施設、盲導犬訓練施設又は視聴覚障害者情報提供施設を経営する事業及び身体障害者の更生相談に応ずる事業 (第2種)
・身体障害者福祉センター
知的障害者福祉法による福祉事業
・知的障害者居宅介護等事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者短期入所事業、知的障害者地域生活援助事業又は知的障害者相談支援事業、同法に規定する知的障害者デイサービスセンターを経営する事業及び知的障害者の更生相談に応ずる事業 (第2種)
精神障害者福祉法による福祉事業
老人福祉法による福祉事業
・老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業又は認知症対応型老人共同生活援助事業及び老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、老人福祉センター又は老人介護支援センターの経営 (第2種)
生活保護法による福祉事業
・救護施設、更生施設その他生計困難者を無料又は低額な料金で収容して生活の扶助を行う施設の経営及び生計困難者に対して助葬を行う事業 (第1種)
売春防止法による福祉事業
・婦人保護施設 (第1種)
などといったものです。
上の(第1種)と記したものは公的機関ならびに社会福祉法人のみが事業を許されるもので、(第2種)は届出制で行える事業です。
そしてもうひとつ公衆衛生も上の3つに並ぶ厚生事業の4本柱になります。
生活保護問題や民主党時代の子ども手当と児童手当、年金問題を考える上で財源方式や受給資格認定方法のことが大きく関わってきますし、ベーシックインカム導入の話をする上でも頭に入れておくべき事柄です。各記事で詳しく述べていく予定です。