新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

銀行(金融機関)関係者の泣き脅し

前回の記事「”シロクマ””シロトン”と化した黒田日銀総裁 」において、吉田繁治氏が書いた「銀行は既に危機状態、銀行赤字→国債経済崩壊に至るか?」という記事のリンクを貼っておきました。

この記事によれば

・日本の地銀は円国債金利がマイナスからゼロ、民間への貸し出しが平均金利0.76%という超低金利状態であるために、105行のうち半分が、2期連続で本業が赤字になっている。

・銀行が本業の赤字を埋めるために、低い価格で買った国債を高い価格で売って含み益を得ていたが、これも、マイナス金利~ゼロ金利のおかげで、国債価格が高止まりし、2018年以降は含み益はなく、益出しにならなくなってしまった。

・2016年導入のマイナス金利は金融機関にとって大きな打撃で、国債の売買による益出しが薄くなるどころか、損するまでになってしまった。

ということのようです。

 

吉田氏のような人はアベノミクスはじめた(日銀の国債買受を進める)量的緩和政策やマイナス金利導入といった異次元金融緩和政策をやめないと、地銀をはじめとする金融機関が経営破綻して、金融危機を招くぞ~と言っているわけですね。こういう記事について読むたびに私は「また銀行(金融機関)関係者の泣き脅しかよ・・・・。」と呆れております。

 

「銀行は民間企業に資金を貸し出して産業を支える機関」として世間から特別視されていました。銀行を護らないと国全体の経済がひっくり返ってしまうと多くの人々は信じてきたのです。そのために大蔵省→財務省金融庁や日銀は銀行が潰れてしまうようなことがないように、護送船団方式までとって庇護してきました。

 

しかし1990年代に入り、バブル景気が崩壊し、当時の日銀総裁であった三重野康金利を引き上げて、銀行は民間企業への融資を一方的に打ち切ったり、引き揚げたりしました。信用収縮です。

 

信用収縮の様子

f:id:metamorphoseofcapitalism:20190823224955p:plain三重野康

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三重野が行った金融引き締めと銀行の貸し渋り貸し剥がしによって多くの民間企業が倒産や廃業に追い込まれます。この当時「銀行は晴れの日に傘を出し、雨の日に取り上げる」と揶揄されたものです。銀行の顧客であり借り手であるはずの民間企業を見殺しにしたのです。

参考「”平成の鬼平”が引き金となった失われた20年

 

こんな調子で1990年代に民間企業の投資意欲を冷え込ませ、資金需要も萎んでいったわけです。こうなるとあとから日銀や銀行が金利を引き下げてやっても、民間企業は簡単に投資拡大をしようとしなくなります。1990年代後半には日銀がゼロ金利を導入しましたが、それでも効果が現れにくくなっていました。流動性の罠です。

参考 「連続的な物価と賃金下落が招いた流動性の罠 その3

 

三重野時代に話を戻しますと、金利引き上げで景気が失速した後も簡単に再緩和をしようとしませんでした。そうこうしているうちに金利を下げても下げても金融緩和政策が効かなくなってしまったのです。

高橋洋一氏の論説抜粋

”さらに大きな問題は91年7月に6%から5.5%に下げるまでに時間がかかったことだ。下げのタイミングが遅れると、その後の引き下げは後追いとなって景気が回復できない。”

 

この当時を振り返ってみると気がつくことですが、超低金利やマイナス金利、そして量的金融緩和などといった前例のない金融緩和政策を導入せざるえない状況をつくったのは誰でもない三重野以降の日銀総裁自身なのです。

 

「もう日本は資金需要がないから金融緩和は効かない」って?

そりゃあ借り手の民間企業をシバキ、どんどん潰しまくっていけば当然でしょうね。

「バカじゃねえのか?」です。

 

銀行などの金融機関は民間企業への融資で金利を稼ぐのではなく、収入源を国債などの公債やその転売益に求めはじめます。お上の脛をかじって生き延びようとするわけです。非常に不謹慎な言い方ですが「国債は銀行への生活保護か?」と自分は思ったことがあります。国(財務省金融庁・日銀)と銀行などの金融機関との共依存関係といっていい状態です。さらにこの共依存関係に加わっているのが金融機関の御用エコノミストたちになります。私はこの共依存関係を”金融社会主義”と名付けました。

 

ここ最近「異次元金融緩和をやめて金利を上げれば地銀の収益が回復するじゃないか」などと言っている人たちが増えています。しかしこれは「(資金という)商品の値上げをすれば収益率が上がって儲けが増える」といった発想と同じです。値上げで売り上げが落ち込んで逆に収益を落とすなどといったらマヌケです。しかしそれをやらかそうとしているのが財務省や日銀、そして金融関係者らです。

 

何度もここで私が言ってきたように資本主義経済の原動力はモノやサービスなどの財を生産し、労働者に富を分配する民間企業です。大蔵省→財務省金融庁や日銀、そして金融機関とその御用学者らは1990年代以降民間企業を蔑ろにし続けてきたのです。そして金融機関の借り手である民間企業がボロボロになって、金融機関や政府は自分の首を絞める結果となりました。

 

私は量的金融緩和政策をやめたところで、銀行などの金融業界の経営が持ち直すとは思えません。

 

ほんとうに金融機関の経営を救いたいのであれば、もっと民間企業の活発化を計り、彼らの事業拡大や投資拡大意欲を促して、融資需要を増やしていくべきではないでしょうか。それが健全な資本主義経済のあるべき姿であり、自由主義本流の考えであると私は思います。

 

 

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