新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

金融危機や預金封鎖が起きるのはなぜか?

いまわたしたちが手にする紙幣というものが、負債から生まれてきたものだということをずっと説明してきました。
銀行が資本家もしくは国家に融資を行うことによって、無からお金を生み出しているのです。これを信用創造といい、それによって生まれたマネーを信用貨幣といいます。

今回はその信用貨幣制度が招いてしまう大きな落とし穴について話します。それはバブルという信用膨張とその崩壊がもたらす金融危機です。

前に書きましたように金細工師を前身とする銀行家が生み出した信用創造が実際にある金(gold)の量よりも多くの紙幣を発行することが可能となり、そのおかげで莫大な資本金を必要とする重工業を発展させることができました。産業革命大航海時代は信用貨幣制度によってもたらされたものだといっていいでしょう。今日の高度な科学文明社会も信用貨幣制度によるものです。

しかしながらこの信用貨幣は元々銀行家がペテンやハッタリで生んだお金です。 (以下の画像は「お金ができる仕組み 銀行の詐欺システム」より
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銀行家が実際に金庫で預かっているゴールドの額以上の紙幣をマネーペンと紙きれだけでどんどん発行し、借り手に貸し付けを行ったことがその発祥です。いま我々が手にしている紙幣も同様でその正体は泡銭であります。キツネやタヌキが葉っぱや石ころを化かしてつくったようなお金です。

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銀行家と資本家たちはこのような泡銭をどんどん膨らませていったのです。(信用膨張)
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銀行家が資本家に巨額融資をしたとしましょう。融資を受けた資本家が立派な機械を購入して効率よくたくさんのモノを作ってガッツリ稼いできます。その稼いだお金で銀行家に借金を返します。そうすると銀行家は無から巨額の財を生むことができてしまいます。銀行家は笑いが止まりません。そのお金をまた資本家に融資してを繰り返して銀行の財は膨れ上がる一方です。
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信用創造があるからこそ、これまでにない大型事業投資が可能となり、重化学工業の発展や鉄道・船舶・航空機・自動車といったものの生産や普及を可能にしました。そのような実物財の生産・供給と消費の拡大に伴う貨幣の増加ならいいのですが、株や土地・資源などの資産価値が異常に高進し、投機行為や不労所得を膨らまそうとする人たちが大勢現れます。銀行や株・証券ブローカーたちは投機家たちに融資し、打ち出の小槌のようにマネーを創造して信用膨張を引き起こします。

このような株や不動産などのへの投機ブームは必ず崩壊します。このとき株や不動産などの資産価値が一気に暴落し、多くの借金の山・不良債権が残ります。銀行は貸し倒れによって一気に経営が悪化し、それを不安視する預金者たちが一気に押し寄せ、預金の払い戻しを求めます。

ところがどんなメガバンクでも預金者全員に預金を払い戻せるだけのお金を金庫に持ち合わせていません。信用創造は銀行はいま実際にもっているお金以上の融資ができてしまう仕組みです。預金者全員が預金の払い戻しを求めたらどの銀行も速攻で潰れます。そうしたトラブルが金融危機であり、取り付け騒ぎ預金封鎖というものです。
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現在はこのようなトラブルが起きないよう、政府や中央銀行があまりに乱暴かつ無節操な信用膨張が起きたりしないように準備預金制度があり過剰な信用膨張を防止しています。金融機関に預金量の一定比率に乗じた現金を中央銀行当座預金や準備預り金として預けなければならないという規制(法定準備率)をかけたり、いくつかの市中銀行がネットワークを組みひとつの巨大銀行のような形にして一行の経営が危なくなっても預金の支払いに応じられる仕組みを設けています。なお法定準備率や金融機関同士がお互いに短期資金を貸したり・借りたりするときの金利コールレート)を操作することで、銀行の融資や企業の投資を活発化させたり、抑制する政策を金融政策といいます。

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このようにして政府や中央銀行が銀行の経営を監督し、ひとつの銀行が経営危機に陥って、一気に預金を払い戻さないといけないような事態になっても、他行がフォローできる仕組みになってはいますが、1929年にアメリカで起きた世界大恐慌サブプライム住宅モーゲージ金融危機のように、同時多発的にあちこちの金融機関が経営危機に陥ると大変なことになります。こういう状態のときに火消しに回ったのが日本の高橋是清蔵相やアメリFRB議長のベン・バーナンキです。中央銀行が大量に銀行用の当座預金口座に準備預金を積み上げて事を治めます。

このようにしてみると私たちは非常に危なっかしいシステムの上で経済活動を営んでいることに気づかされます。だから銀行に信用創造をやめさせて、全部政府貨幣にしてしまい、実際にあるお金以上の貸し出しを許さない100%マネーにせよという主張がアーヴィング・フィッシャーやミルトン・フリードマンといった経済学者から提案されたことがあります。2008年にサブプライム住宅モーゲージ金融危機の煽りを受けて、銀行が経営危機に陥ったアイスランドでも、信用膨張を起こさないよう通貨改革を行いました。

よくたまに日本の経済評論家たちが預金封鎖だとかいって脅しをかけてくるのですが、それがどういうメカニズムで発生するのか説明している例は少ないです。金融危機預金封鎖が起きる原因はもともと銀行自体が預金者全員の支払いに応じられるだけのお金を最初から持っていないということと、それが明るみになりかけて取り付け騒ぎが起きるということです。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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