新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

なぜリフレーション政策が求められたのか? その2 流動性の罠脱出の切り札

・不況になると総需要(有効需要)=家計消費C+企業投資I+政府支出G+純輸出EX(外国)のうち、企業投資Iが落ち込むことや
リフレーション政策は企業の投資を活発化させるもので、人への投資である雇用の拡大させることが最大目的
だとお話しました。今回は日本が1990年代後半に陥り、なかなか抜け出せない流動性の罠問題とリフレーション政策について述べます。

市中にお金を供給しても投資に向かわず死蔵されてしまう流動性の罠問題は「デフレと失われた20年 」編にてケインズポール・クルーグマン教授が行った説明をもとに3回に渡り解説記事を書きました。

幣サイトより

もう一度流動性の罠について簡単に説明しますと、
金利がゼロ近辺をさまよいはじめると、貨幣は投資よりも現金として保有しておいた方がいいという人々は思い始める。(流動性選好の絶対化
・物価が下落し続けると企業は金利以上の収益が望めなくなり、債務を抱える負担だけが重くなるので、投資を躊躇う。実質金利名目金利-(-物価状態で名目金利がゼロでも実質金利は高くなる
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(実質)金利が高くなると、企業はそれを超える収益率のない事業を打ち切ってしまい投資が減ります。

・一方継続的な物価下落は貨幣の価値が増え続けるのと一緒で、投資や消費に遣うよりもそのまま貯蓄しておいた方が得になるという予想を生む。(貨幣のバブル現象
・LM=流動性選好(貨幣需要)Lと貨幣供給MがL<Mとなり、銀行が貨幣を貸し付けたくても借り手の方が少なくなり、資金が市中へ出回らずブタ積みされてしまう。

ことになります。

流動性の罠に陥っているとき、多くの人々は
「金は死ぬ気で掴め!掴んだら殺されても放すな!」
と考えるようになります。(名付けてデフレ鬼教訓です。)

企業の投資意欲がものすごく低くなってしまうと、いくら政府や中央銀行が金融緩和で金利を引き下げ、市中銀行に対し当座預金市中銀行中央銀行内に設けてあるもの)に積み上げた貨幣(マネタリーベース)を融資しろと催促しても貸し出しが進まなくなります。いくら融資・投資需要が低いからといって金利をゼロ以下に下げるわけにはいきません。そうなると通常の金融政策が無効化してしまいます。
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流動性の罠に陥ったら金融政策が無効になってしまうからやっても意味がないでは済みません。これを放置していたら生産活動や雇用がどんどん萎縮する一方です。ケインズは金融政策がダメなら財政出動をしろと言いましたが、無制限に国債を発行し続けるわけにもいきません。1990年代末期に小渕恵三総理と宮澤喜一財相は必死に巨額の財政赤字を出しながら財政出動をしましたが「ヘドロにコンクリートパイル」状態でした。

「じゃあどうするの?」ということでクルーグマン教授が示した処方箋がインフレ予想を使って流動性の罠から脱しなさいというものでした。これがリフレーション政策となります。

デフレで物価が下落し続けると
実質金利名目金利-(-物価)
となってしまうことは上で述べましたが、物価上昇を起こせば
実質金利名目金利-物価)
となって実質金利が下がります。

アベノミクスが始動した2013年春、白川方明氏に代わって日銀総裁に就任した黒田東彦氏は「2年を目途に物価上昇2%を目指す」と宣誓しました。これがインフレターゲットというもので、企業や金融機関・投資家たちの予想を変えるものです。このインフレターゲットの意味について次々回の「ゲーム理論とインフレターゲットの意味」で述べます。

次は信用貨幣制度におけるマネーの発生と供給のおさらいと金融緩和の意味です。


今回の話がいまいちピンとわからないと思われた方は上の記事で一度貨幣発生や供給のしくみを掴んでいただくとよいかも知れません。

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「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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