新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

トリクルダウン型になっていた日本型景気対策

財政政策についてその意味や効果、そして今後あるべき姿について問いかけておりますが、今回は政府が行った財政政策がこれまで多くの国民の所得向上につながっていったのかについて検証しましょう。

過去の自民党が行ってきた景気対策の代表格といえば公共事業でインフラ整備をはじめとする土木・建築事業がその代表格でした。いまのアベノミクスは金融政策が主軸なのですが、未だに世間では土木公共事業で景気を盛っていると思い込んでいる人が多いです。あと企業への補助金や減税も自民党流の景気対策だと見なされてきています。

自分が言いたい結論を先に述べてしまうと、過去の自民党が行ってきた各種景気対策は官庁・特定業界・特定法人(農協など)・企業などへの財政出動が目立っていたような気がします。個人対象のものはあまりなく、団体中心です。そうなってしまう理屈ですが、個人に公金を支出するというのは憲法違反だという考えが官庁内で根強くあります。東日本大震災のときも個人に対する生活再建支援策は二の次にされていたような嫌いを感じました。中小企業向けの補助金も個別の企業に出すという形ではなく、複数でグループを組んで共同で地域事業を行うという形にして補助金申請をさせています。その手続きの煩雑さが不評でした。


「震災復興予算の査定は厳格かつ公正に」といっておきながら、被災地・者とほとんど関係のない岐阜とか沖縄などの企業や防災工事に復興予算が流れたり、軍隊まがいの詐欺組織というべきNPO団体に何億円もの雇用対策費が私物化されるという事件が起きました。

とにかく国がやる財政政策は中央集権的なトップダウン式が多く、個人を徹底的に蔑むような考えが強かったです。

個人へ直接お金を配分するのではなく、業界や企業・団体を経由して上から下へ注ぎ込むようなトリクルダウン型財政政策は結局元請け企業が独り占めして、下の層の現場労働者などへ行き渡りにくいという弊害をもたらす可能性があります。レントシーキングを増長させかねません。

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先日の記事「財政出動で国民は豊かになったのか~緊縮財政は間違いだが~ 」で掲げたグラフをもう一度載せますが、1997年以降国民の所得は連続的にだらだら低下しております。
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グラフを細かく見たら僅かに小渕政権や麻生政権のときに児童のいる世帯の部分だけ下げが弱まったかに見える気がしないでもないですが、全世帯の平均所得はそれと関係なく下げ続けました。もちろん緊縮財政色が強かった小泉政権のときも同然で、このことが「見かけだけの景気回復」とか「小泉・竹中ノセイデ格差ガー」と批判される原因につながります。

ここ最近「もっと財政出動をやれー」「積極財政をー」という声がどんどん強まっていますが、気をつけてほしいのはトップダウン型・トリクルダウン型財政政策になっていないかということです。個人に対する直接給付型の財政出動が手薄なのですが、こういうものは役人の裁量を入れる余地がなく旨味がないために「バラマキだー」といって法案を潰されやすいです。われわれはただ「財政出動」と叫ぶだけではなく、「直接給付を手厚くしてほしい」と主張しないといけないのです。

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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