新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

次世代への投資こそワイズスペンディングである

財政政策のあり方とケインズ経済学の考え方について書き続けていますが、今回は投資としての財政政策です。

政府は「国よる再分配は質量保存の法則と同じ 」でも書いたように基本的にモノやサービスといった財を自ら生産しません。国家が生産するモノやサービスは道路や上下水道・防災設備などといった社会基盤の他に、警察・消防・教育・防衛・社会保障・福祉といった公共サービスとなり、ここではそれをまとめて公共財と呼んでいます。公共財以外のモノやサービスの生産は基本的に民間企業が担うものであって、政・官が割り込むべきではありません。モノやサービスを生産できず、徴税という形でしか財を得ることができない政府が勝手に支出を肥大化させてしまうことは国民の財とその使用の裁量権を国家が剥奪してしまうことになるからです。あるいは国が勝手につくった財を国民に押し売りするようなものだとも言えます。(「国民からお金を遣う自由や裁量を奪っていけない~国家社会主義的思考を撃つ~ 」)

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恐慌など深刻な不況で決定的に有効需要が低い状態の場合は財政政策を使って企業の投資や雇用を回復させる手段を用いないといけません。しかしそれは非常手段であって、経済活動が元通り回復したならば政府は国民の経済活動への干渉を控え市場原理に任せていくべきです。経済的立場の弱い一般個人ならともかく民間企業がいつまでも政府支出に依存した経営をやるのはおかしいことです。

元々ケインズ理論で一番大事な要点はいかに民間企業の投資を増やすかです。不況で最も落ち込む有効需要は企業の投資です。ケインズはそれを回復させることが経済再生につながると考えていました。ケインズ理論の主役と思われている財政政策は民間企業の投資を再回復させるための手段に過ぎません。

自分は財政政策で景気を盛るといった考えは卒業すべきではないかと考えています。経済活発化の原動力は民間の投資です。旺盛な企業の投資こそが人々のモノやサービスなどの財の生産や分配を最大化させます。国の財政政策ではありません。財政政策は基本的に民間が生産した財を再分配することだけで、財そのものを殖やしません。国の財政政策の力で経済が回っているのだという考えは国家社会主義的な発想であり、国民をバカにした傲慢な考え方です。

国が新たな公共財の生産を進めさせる事業を公共事業といい、また国が公共財の生産に投資することを財政投融資と言います。これらの事業や投融資は民間の能力を超えるもの・市場価値で推し量りにくい分野で行われるもので、小泉純一郎元総理流にいえば「民間でできることは民間で、民でできないことは官に」という形ですべきものです。
民間ではなく官がすべき事業や投融資の例は上であげたように道路や防災設備といった社会基盤整備や警察・消防・教育・防衛・社会保障・福祉関係などになってきますが、将来の経済活動活発化に向けた投融資で政府が力を入れた方がいいのは科学における学術研究や産業技術に関するものでしょう。
科学研究の世界において基礎研究で大きな成果につながるのは「千三つ」で、何億以上もかけて投資をしても1000のうち997が失敗してしまうという状況ならば民間企業単独だと投資毀損リスクが高く手に負えません。千三つでも3つの成功が997の失敗を補うに足りるならば国がその研究費を担うという考えはありです。

国民個人に対する高等教育普及も戦略的な国家による投融資といえましょう。
科学研究や産業分野での技術者の質や層を厚くすることは国際競争力を強化していくことになります。さらに高等教育を受けたものは恒常所得が高い傾向にあり、堅調な消費活動をしてくれることが期待できます。教育は便益B/費用C値が高い優良投融資分野です。

近年中国のIT技術の進歩がいろんな情報媒体を通じて伝えられてきますが、その勢いとスピード感は日本にないものです。あと電機だけではなく自動車産業の分野においてもスウェーデンボルボを資本下に取り込んだ中国の吉利汽車も侮れない存在になってきました。


日本の政治家・官僚の多くは未だにどこかで「日本は世界でも有数の技術立国だから」と高をくくっているのではないかと思われてなりません。世界の産業技術競争の動きを敏感にとらえ、自国の科学技術力や産業競争力を磨くという戦略眼を持って動いている人がどれだけいるでしょう。私はモリ・カケ・スパで安倍総理の疑惑追及とかいって騒いでいる議員やマスコミが非常に呑気に見えて仕方がありません。

今後の政府による公共事業や財政投融資は日本の民間企業の競争力強化や投資を拡大させる分野を重点的に行っていくべきでしょう。長期の視野に立って国家戦略を練って科学・産業技術を育成していくことこそワイズスペンディングなのです。

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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