新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

雇用悪化・緊縮財政で国民生活を痛めつけかねない宏池会・岸田政権の危険性

f:id:metamorphoseofcapitalism:20220122213555j:plain自民党岸田文雄政権が昨年10月に発足してから3か月以上経過しました。この政権は当初より経済政策の方向性に不透明感があり、筆者は岸田氏が自民党総裁に選出されてからモヤモヤした感覚を常に抱き続けています。とはいえどまだ自民党総裁選挙中はまだアベノミクスの継承や増税・歳出削減を封印する姿勢を打ち出しており、以前よりあった「財務官僚のポチ」といった風評を払拭するような政権運営をするのではないかという微かな期待も持ち合わせてもいました。

それから時が過ぎるにつれ、この政権に抱いていた不安や不信がどんどん確実へと変わっていきます。この政権は岸田氏と同じく宏池会に属し、緊縮色が非常に強い林芳正議員を外務大臣に任用したり、党の税調会長に同じく増税や歳出削減に前のめりな宮澤洋一議員をあてがったりしています。昨年12月に基礎知識編ブログの方でこの批判をしました。

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岸田政権は安倍政権が導入し雇用改善などで大きな成果をもたらした異次元金融緩和の縮小を計り、その上に増税ならびに歳出削減を進めていこうと目論んでいるようです。筆者はこの政権が長く続いてしまった場合、深刻な不況と増税・歳出削減で国民生活はかなり厳しいものになると予想しています。タイミングが悪いといま日本でも懸念されかけているインフレ(資源価格や食糧品などの価格を含めた方の物価上昇)が加速したまま、雇用や賃金分配が低迷し、さらには増税で苦しめられるという三重苦に国民が襲われることになるかも知れません

ここ最近ですが、アメリカなどで高いインフレが目立つようになり、アメリカの中央銀行FRBは金融引き締めに転じようとしています。日本でも原油や食糧品などの資源価格高騰を起因とするインフレの気配が出かけており、日銀の金融緩和を縮小していくべきだという発言をする人たちが目立ってきています。筆者は基礎知識編ブログの「金融引き締めでコロナ禍後のインフレを抑制できるのか? | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)」と「金融緩和打ち止め誘導の「悪い円安」論 | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)」で原油価格・食糧品価格などの高騰による物価上昇の場合は金融政策の引き締めは効果が望めないばかりか、企業活動の委縮や雇用の悪化だけをもたらしかねないと警告しました。

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よくインフレが発生した場合は金融政策を引き締めるべきだとされていますが、それは金利を引き上げて民間企業の事業投資を抑制させ、雇用や賃金分配の縮小で過剰な消費を抑えることで物価を引き下げていくものです。ロシアやOPECなどの資源産出国が生産を渋ってその価格が上昇してしまっている場合は金融政策の引き締めは無意味です。またここしばらくドル高・円安が進んでいる状況ですが、これも資源価格高騰でドル通貨の準備が必要なためにドル不足に陥っていることによるものです。いずれにしても資源生産や半導体などの供給不足が解消されない限り収まらないインフレだといえましょう。岸田総理や他の宏池会所属議員にそうした判断ができるかです。現在宏池会には有能な経済ブレインであった山本幸三氏がいません。

自民党宏池会という派閥は池田隼人氏が立ち上げたものでしたが、官僚出身の所属議員が多いのが特徴で「御公家集団」と揶揄されてきました。政策についても非常に大蔵省・財務省色が強く、財政規律を重視し増税や歳出削減に前のめりです。アベノミクスで採用された異次元金融緩和政策についても、消極的というか無理解です。また外交については親中国・韓国路線だともいわれています。安倍晋三元総理は清和会に属していますが、宏池会と清和会は対立的で経済政策や外交姿勢は真逆であり、いまの岸田総理は清和会色をどんどん払拭しようと躍起になっているように見受けられます。筆者は安倍元総理がすすめた異次元金融緩和政策は企業活動の活発化と雇用の改善に寄与したと高く評価しており、同じく安倍氏が進めた日本、米国、オーストラリア、インドの四か国同盟(クワッド)などの外交・安全保障戦略についてもその高い功績を認めています。しかし岸田政権は安倍・菅政権時代の経済的・政治的資産をすべてぶち壊しにしようとしているのです。岸田政権発足直後に行った衆議院総選挙で当初自民党公明党の苦戦が予想されたにも関わらず善戦して以降、この政権は完全に図に乗っているとしか思えません。官僚依存が強いマスコミもまた岸田政権に対して批判が非常に甘く、政策が迷走しまくっていても内閣の支持率は高い状態が続いています。宏池会のやりたい放題でしょう。

それと岸田総理は株価の動きに無頓着なようです。岸田政権以後金融所得課税見直しの話や自民党梶山幹事長代行の「株主利益を人的資本に投入」発言などでこの政権は何度も株価下落を起こしています。株価というと「庶民の暮らしに関係ない」と思われそうですが、忘れてはならないのは株価は先々の雇用状況に反映されます。このブログで何度も申し上げてきましたが、雇用とは人への投資です。株価は企業の将来の収益や投資意欲を占う上で確認しなければならないものです。

株価が低いままになっているということは企業が事業を積極的に拡大し、収益を伸ばす期待が薄いということです。こんな状況で積極的に人を多く雇い入れようとはしません。いまの政権ですとかなり長期の経済停滞を招きかねません。となってくると気になるのは新卒者の求人状況でしょう。再び就職氷河期が訪れる危険性が高まってきました。

景気や雇用の悪化で所得税法人税の税収が落ちて、それを補うために増税を行い、さらに景気悪化と国家財政の悪化を進行させることになるのではないでしょうか。ネット上で既に揶揄されていますが、岸田政権は「新しい資本主義」ではなく「新しい社会主義」を目指しているように思えてなりません。筆者はこの国がかつての旧ソビエトのように墜ちぶれ、やがて好き勝手自由にモノを買えないような状況になっていく気がします。

 

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運命のわかれ道の年となる2022年

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皆さま、新年あけましておめでとうございます。ここしばらくブログ更新が滞りがちになっていますが、今年も「暮らしの経済手帖」をよろしくお願いいたします。

今年一年について占う漢字一文字として筆者は「岐」を選びました。その理由は政治家や中央銀行、そしてわたしたち国民ひとりひとりの判断や行動が今後数年以上にわたる経済や政治、生活状況を大きく左右してしまう可能性が極めて高い年だと思ったからです。新年早々このようなことは申し上げたくないのですが、今年一年は経済や政治情勢、あるいは国際情勢が波乱づくめになるのではないかと筆者は予想しています。

もう皆さまがご承知のとおり、アメリカをはじめとする世界各国で高いインフレの動きが顕著となっております。日本では欧米ほどの高いレベルではないのですが、資源高や円安を起因とする物価上昇の気配が出かかっています。現在のところ企業物価指数は大きく上昇しているのですが、決して高い購買意欲であるとはいえない日本の消費者の事情を考え、日本のメーカーや販売店は企業努力で販売価格への転嫁を避けようとしてきましたが、限界を超えたためやむを得ず商品の値上げに踏み切る場面が増えてきました。

そうなってきますと、財政政策や金融政策の引き締めをすべきだという話が浮上してきます。既にアメリカの中央銀行FRBのパウエル議長は早期の利上げを示唆する発言をしています。昨年末「暮らしの経済手帖~基礎知識編~」の記事でも書きましたが、筆者はFRBの金融引き締め判断は早すぎで、物価抑制は本来は需要を膨張させすぎた財政政策の引き締めか、モノやサービスなどの財生産・供給活動を早期回復させることだと述べました。うまく景気や雇用を折らずに金融政策正常化へともっていければ御の字ですが、筆者は今年中盤あたりで早すぎる金融引き締めが災いして、企業活動が委縮し、雇用が再悪化する危険性を想像しています。

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村上尚己さんも筆者と同様の予想です。

toyokeizai.net

日本においても同様です。自民総裁選当初はアベノミクス継承を主張していた岸田現政権ですが、経済政策と外交・防衛政策は安倍・菅時代とは真逆の路線を歩んでいます。岸田総理は官僚色が強い宏池会に属していますが、茂木外務大臣の後任にやはり宏池会で緊縮財政色が強く媚中派といわれる林芳正議員を任命しました。税調会長もやはり緊縮派(緊縛派と言いたいが)として名高い宮澤洋一議員を任命しています。岸田政権の人事を見ていると露骨な安倍・菅路線否定で、金融緩和や積極財政を嫌い、中国よりの外交姿勢を感じさせます。彼らはお上の財政規律のことしか眼中になく、国民生活や雇用、民間企業の苦境を無視した経済政策を進めることでしょう。日銀の中でももっとも積極的に金融緩和の推進を主張されてきた片岡剛士審議員の後任ですが、おそらくまた金融政策のことをまともに知らないような素人を任命してしまうような人事を岸田政権がやらかす可能性が濃厚です。アベノミクス潰しにかかるでしょう。

そして習近平中国共産党覇権主義や暴走がどんどんひどくなり、香港はおろか台湾や尖閣諸島も吞み込もうとしています。そういう中で岸田政権のような媚中政権ができてしまったことは非常に危険です。有事勃発を覚悟しないといけません。

今年夏には参議院選挙をひかえているのですが、岸田政権の稚拙な経済政策や外交・防衛戦略によって雇用の再悪化や景気失速を招き、さらにはかつての民主党鳩山由紀夫政権のときのような外交・防衛の失敗をした場合、自民党は相当痛手を被る可能性があります。これがもとで極右ポピュリズム政党や政治家が現れないとも限りません。

昨年末に放送されたネット番組で山崎元氏や森永卓郎氏がかなり強烈な2022年の予想を打ち出しています。

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山崎元さんも岸田さんが日銀人事を誤って、黒田総裁体制になってからの金融緩和政策を台無しにし、日本が再び数年単位でまた停滞することを危惧されています。

このままですと、この国やわれわれが「蜘蛛の糸」の犍陀多のごとく、しがみついた糸がぷつりと切れて地獄の底へ真っ逆さまに墜ちるような状況になるでしょう。ここで何度か述べていますが、半藤一利氏が仰っていた「四十年史観」や「滅びの四十年」の正しさが立証されそうです。今後7~8年でわたしたちの日本の姿は想像しないような状況になっていても不思議ではありません。

わたしたち、とくに若い世代の方が危機バネを働かせて、この国が滅びへの道から再生への道へと転じていくことを祈ります。

 

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岸田文雄政権発足と今後の経済政策の行方

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先月9月29日に行われた自民党総裁選挙で岸田文雄候補が新総裁に選出され、10月4日の臨時国会にて第100代内閣総理大臣に任命されました。宏池会の議員が政権を握るのは30年ぶりのことです。

宏池会は1957年に池田隼人が旗揚げした自民党内の派閥で、大平正芳、今回財務大臣に任命された鈴木俊一氏の父である鈴木善幸宮澤喜一、そして岸田文雄氏と4名の総理を輩出しています。この派閥は官僚出身の議員が多く「政策には明るいが政局には暗い」と評され御公家集団と揶揄されてきました。岸田新総理も財務官僚が多く、これまでの政策発言は官僚よりだとみられてきております。岸田氏が総裁選出馬のときツイッター上に設けていた岸田BOXというご意見箱にも「財務省の狗(イヌ)」「財務省のポチ」という投書がなされていたようです。かなり緊縮財政色が強い政権になるのではないかと警戒されています。

しかしながらその一方で、総裁選出馬前より岸田氏は安倍晋三元総理が会長をつとめている「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」に参加し、金融緩和政策や積極的財政政策についての知見を得ようとしていました。岸田氏と同時に総裁選に出馬した高市早苗議員もこの議連に参加しています。

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この議連には岸田氏と同じ宏池会に所属し、経済通と云われた山本幸三議員(写真右端)も関わっています。山本幸三議員は岸田氏に金融政策や財政政策についてのレクチャーを行ってきたようです。岸田氏は総裁選を通し、極端な財政均衡主義を控えるようになり、高市氏ほどではないですが機動的財政出動の必要性も言及しています。

宏池会は伝統的にリベラル色が強く、外交は経済重視で防衛観もハト派であるといわれてきた派閥ですが、経済政策と共に安倍政権以来築き上げた路線を継承していくことになると考えられます。中国共産党覇権主義や横暴がかなり目立ってきており、北朝鮮や韓国を含めて日本は毅然とした姿勢を見せつけていかねばなりません。アメリカとオーストラリア、インド、そして台湾と連携し、インド・太平洋・東アジア圏の安全を護っていく必要性が高まっています。宏池会中心の内閣となってもその路線を覆すことはできません。経済政策についてもアベノミクスに採り入れられた異次元金融緩和政策が民間投資と雇用を活発化し、それが第2次以降の安倍内閣を7年以上にも及ぶ長期政権としたという了解を岸田氏もしていることでしょう。財務省や金融機関関係者、旧き日銀理論支持者たちは異次元金融緩和政策をやめさせようとしてきましたが、それを岸田政権の閣僚が口にしようものなら一気に経済や雇用が崩れ、政権崩壊につながることを岸田氏は理解していると思われます。既に岸田新内閣は株式市場や内閣支持率で手痛い洗礼を受けています。アベノミクスの継承をよりいっそう強く打ち出していかねばならなくなっています。

岸田氏は自民新総裁に就任後、党役員人事で共に総裁選に出馬し、同じくアベノミクスの継承と財政政策面を中心としたその強化を掲げてきた高市早苗氏を政務調査会長に指名しました。高市氏の総裁就任を推していた人たちからは冷遇だという声か上がりましたが、政調会長というポストは自民党としてどのような政策・法案を打ち出すかをまとめ、その方針を内閣に伝えて予算案に反映させるという重い役職です。高市氏は党内で相当強い権限を持つことになり、氏が総裁選中に唱えていた経済政策や防衛政策を党の基本政策として反映させていくことができます。

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維新の会の音喜多駿議員の見方によれば、あえて高市氏を閣僚から外してZ省の切り崩し工作から守り、党側から圧力をかけさせられるようにするようにしたのではないかということです。

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岸田新内閣が発表した閣僚についてですが、財務大臣は先にも述べた鈴木善幸元総理の長男である鈴木俊一氏であり、他の閣僚も初入閣が13人と馴染みのない名前や顔が多く、期待感がさほど高まっていません。鈴木俊一氏は一応アベノミクスを支持する発言をしてきており、財務大臣就任後もデフレ脱却へ向けて大胆な金融政策・機動的財政政策・成長戦略の3原則で取り組むとの意向を明らかにしています。しかしその一方で消費税減税に反対の姿勢を示すなど緊縮色をみせており、確固たる経済観や財政観を持っている人物とは思えないのです。凡庸な印象を受けます。

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そして岸田総理自身の経済観自体についても疑心暗鬼にならざるえないものであります。岸田氏は「新しい資本主義」を標榜し、貧富格差の是正とそのための所得再分配を強調しておりましたが、これに

規制緩和構造改革新自由主義的政策は我が国経済の体質強化と成長をもたらしたが、富める者と富まざる者の分断も発生。成長のみ、規制緩和構造改革のみでは現実の幸せには繋がらず。 」

といった経済学的に理解しがたい発言が含まれています。「新自由主義」という言葉の定義は非常に曖昧でふわとしており、理論性の薄さが気になります。

参考「新しい日本型資本主義 ~新自由主義からの転換~ 」衆議院議員岸田文雄

https://kishida.gr.jp/wp-content/uploads/2021/09/20210908-02.pdf

岸田氏が示した資料において

「デフレ脱却」に向け、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3本柱
を堅持。 

が第一に掲げられており、アベノミクス継承の意志を示してはいますが、岸田氏が金融政策の役割をどこまで深く理解しているのか不明です。別のブログでも取り上げてみたいですが、第2次以降の安倍政権で導入された異次元金融緩和政策によって企業の事業投資意欲と雇用の最大化を促し、大企業から関連企業への支払いや就労者への賃金分配が進んでいます。新卒者求人倍率も上がって安定しました。金融政策は雇用の安定と経済格差発生防止に寄与するということを岸田氏が理解されているならば、もっとその説明を詳しくされた方がよいのではないでしょうか。

岸田氏は金融所得課税の見直しや医療・介護・保育など公的セクターの現場で働く人の所得向上、大企業による下請けいじめゼロを目指すとしていますが、貧富格差や下請けいじめ問題も金融緩和政策で相当改善させることができます。

あと新自由主義的だとされる規制緩和構造改革といった政策ですが、これもまた貧富格差の発生につながったという根拠はどこにもありません。「新自由主義的政策」というのは恐らく宏池会とライバル関係にあった清和会の小泉純一郎政権のことを指しているのだと思われますが、この政権の問題は規制緩和構造改革よりも緊縮気味だった財政政策にあります。岸田氏が所属する宏池会の議員も財務官僚寄りの緊縮財政に走りがちで、やはり小泉政権と同じような批判をされるリスクがあるのです。

それと最後にこの政権でいちばん気になる点を申し上げると、日銀政策委員や総裁・副総裁の人事をどうするのかという点です。2022年7月23日に片岡剛士政策委員の任期が終了します。片岡委員はリフレ派といわれてきましたが、いちばん積極的に金融緩和政策の強化を主張されている方です。岸田政権が片岡さんを続行させるのか、飯田泰之さんなど他のリフレ派といわれる論客を推すなりしてくれるのであればいいのですが、マクロ経済政策や金融政策のことをよくわかっていない素人を平気で政策委員に任命してしまうようなことをすれば金融政策を軽視しているとみなさねばなりません。岸田政権の本気や経済政策の理解がこのとき試されます。


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菅総理退任と自民党新総裁選挙

今月9月3日、菅義偉総理は月末で任期が終わる自民党総裁選挙に出馬しない意向を示しました。この方は新型コロナワクチンの調達をはじめ、クワッド(日米豪印戦略同盟)強化など防衛や外交戦略の他、経済対策などでも地道に仕事をこなされてきましたが、国民受けが良くなく内閣の支持率がどんどん下がっていました。自民党支持者内でも「菅では選挙に勝てない」という声が高まっていたようです。

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多くの人の見方と異なりますが、経済政策を学ぶ立場から菅総理を評しますと、経済政策とくに金融政策の理解については先代の安倍晋三氏に比肩していました。多くの人にあまり気づかれなかったと思われますが、菅氏が前回自民総裁選に立候補したときの記者会見で、ある記者から「金融緩和の副作用によって地方銀行の経営を圧迫していると言われていますが、菅さんはどうお考えですか。」と質問されたのですが、菅氏はそこで「地方銀行の再編が必要となると思う。」という答弁をしました。記者のような質問は民間事業者の経営状況を無視して金融機関の利益しか考えず、金融緩和政策を妨害したい人間がするものですが、菅氏はそれを一蹴したのです。私はこの菅氏の発言を聞いて氏の金融政策の理解は本物だと直感したのです。

菅総理はその期待にたがわず日銀の政策委員に野口旭専修大学教授を推すなどしています。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

財政政策面でも昨年大型の補正予算を組み、コロナ禍で苦境に陥っている企業等への支援に尽力されています。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

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ただ昨年末に組んだ第3次予算は潜在GDPに対し不足する需要の穴埋めに必要な規模を確保したのですが、世間での菅政権の評価はいまひとつでした。しかも今年度に入り政権末期になってきますと、財務省にがんじがらめにされてしまったのか、菅政権は積極的な財政政策を打ちにくくなっていきます。積極財政を主張していた内閣官房参与参与だった高橋洋一氏が辞任し、その後で岸博幸氏に入れ替わりました。菅総理の周囲は積極財政を推進する論客ではなく、緊縮色が強い財務省寄りの人間や岸氏ならびにデービット・アトキンソン氏のように構造改革重視の人間ばかりとなっていきます。菅政権に対する世間の不満はコロナ感染拡大を食い止められなかったようにみられたことが大きいとされていますが、政権末期になるにつれ、だんだんと財政政策の態度が硬直的になってきたことも不人気の理由のひとつだったかも知れません。

菅総理はもともと権力への執着心があまりなく、もともと体調不良で辞任せざる得なかった安倍前総理の引継ぎのためだけに総理を務めたと見られます。最初から長期政権を目指していたわけではなく、次を任せられる人がいたら席を譲るつもりでいたように私は思います。とはいえど9月から菅総理肝入りのデジタル庁が本格的に起動し、コロナワクチンの接種が進んで感染が落ち着く目前で辞任となってしまうのはあまりに惜しいです。これから述べるように現在出馬を表明した自民党新総裁候補はいずれも経済政策観が著しく貧しいか未知数な人ばかりです。安倍前総理や菅総理のように経済政策とくに金融政策に対する理解がしっかりできているとは言い難いです。後先を考えずに菅政権を窮地に追い込んだマスコミや左派系野党の無責任ぶりに怒りを覚えます。

愚痴を言っていても仕方がないので、現在自民党総裁選に出馬している人の経済観について確認していきましょう。いま名前が挙がっている中で最も有力だと思われる高市早苗氏と河野太郎氏、岸田文雄氏に的を絞ってみたいと思います。

政治家の能力というのは経済ばかりではなく、外交や防衛、社会保障制度、災害など有事に対する対処能力などを総合的にみていかないといけませんが、それでも経済政策がダメだと他の政策も成り立たなくなってしまいます。景気が低迷し雇用が悪化すると、着実に政権の不安定化を招きます。

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上で述べたようにいずれの新総裁候補も経済政策に関しては心許ないところですが、いまの時点で比較的期待できそうに見えるのは高市早苗氏です。菅総理が辞任表明する前に氏は総裁選に出馬する意向を示したのですが、正直突如意外に現れたという印象です。しかし私は諸々の理由で氏の立候補を歓迎しています。これによって小池百合子東京現都知事の野心を砕くことになります。国民不在の抗争を繰り広げる自民党内派閥と霞が関官僚、小池百合子 - 新・暮らしの経済手帖 ~時評編~ (hatenablog.com)

つい先日氏が金融所得増税、キャピタルゲイン増税のことを口にしてしまい、物議となってしまいましたが、それでも金融緩和政策の継続と、物価目標2%達成までプライマリーバランスにとらわれず積極的財政政策を打つ姿勢をはっきり示した点は高く評価したいです。氏は安倍政権時代の経済政策アベノミクスを発展的継承していくとし、3本目の矢を「成長戦略」から「大胆な危機管理投資、成長投資」に変えています。

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上の飯田泰之さんとの対談動画において、高市氏は次のような経済政策案を打ち出しています。

・既存の事業者の経営を守ることがV回復の条件
・コロナ前後の法人課税所得差の8割を給付
・持続化給付金の再支給
補正予算を急がなければいけない
マイナンバーと給付専用口座の紐づけ
・生活困窮者への再度の給付金
・プライマリバランス黒字化目標を一時停止せよ
・サナエノミクスは金融緩和/財政出動/危機管理投資/成長投資
・(金融政策に加え)財政政策にインフレターゲット

SSL Forum 高市早苗氏インタビューのまとめ|飯田泰之|note より引用)

多少危なっかしさはあるといえど、高市氏の提案はかなり良い筋です。細かい点については随時批判して修正を促していけばいいかと思われます。

マスコミで大きく取り上げているのは河野太郎氏と岸田文雄氏ですが、二人とも経済政策だけについては決して明るくありません。金融政策に関する理解がほとんどなく、金融緩和政策を引き締めたがっている様子が伺えました。岸田氏も高市氏同様にコロナ対策として国債を財源にした積極財政政策を行う考えを示しています。氏の場合は比較的左派層も喜びそうな低所得者向けの再分配政策に力点をおいているのが特徴です。しかしながら金融緩和政策などのアベノミクスはトリクルダウンを起こさなかったなどという発言をしています。私は正直岸田氏の経済政策は信用できません。河野太郎氏については経済政策についての具体案をはっきり打ち出していません。

高市氏の経済政策案がもっともいいと言っても、この先思わぬ形でボロを出すかも知れませんし、岸田氏や河野氏の発言もどんどん変わっていく可能性があります。最終的には彼ら彼女らが実際に政権を執ってからでしか評価しようがないことです。今月中はいろいろ落ち着かない状況ですが、総裁選候補者の論戦が国民益につながるものになることを祈ります。


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国民不在の抗争を繰り広げる自民党内派閥と霞が関官僚、小池百合子

7月から8月となり夏真っ盛りとなります。このブログを数ヶ月近く放置していたのですが、この間に政界では数多くのゴタゴタが発生しました。今年に入ってから今に至るまで半年以上も新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が敷かれている状況です。これには小池百合子東京都知事(2021年8月1日現在)が政府を相手にした巧妙な政治的工作が絡んでおり、国政側の菅義偉政権がこれに翻弄されているという背景があります。

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これは公然の秘密とされていますが、小池百合子都知事東京オリンピック終了後に国政復帰をするために、自民党二階俊博幹事長と接触を繰り返していると云われています。二階幹事長は自民党内の派閥である志帥会を率いていますが、小池百合子氏に禅譲するのではないかと噂されているのです。小池百合子氏とやはり同じく自民党の派閥・水月会を率いている石破茂氏は近い関係にありますが、もし仮に小池氏が志帥会を継承した場合、水月会と合併するかも知れません。

もうひとつ池田隼人の流れを引き継ぐ自民党内派閥で宏池会がありますが、そこに属する参議院議員林芳正氏が総理の座を狙うべく衆議院山口3区への鞍替え出馬を7月に表明しています。現在衆議院山口3区は自民党であるものの志帥会所属の河村建夫氏が議席をとっており、宏池会志帥会の衝突となります。

現在の菅総理は無派閥で党内支持基盤が弱く、さらに国民からの支持を強く得ているとは言えない状況です。この政権の弱体化がかなり目立ってきていますが、それを狙って小池百合子氏や志帥会水月会、宏池会自民党総裁・総理大臣の座を狙って内ゲバを繰り広げ始めている状況です。学級崩壊状態といっていいでしょう。

 こうした政治家同士の政治闘争の陰には霞が関の官僚たちも絡んできます。むしろ彼らが政治家を裏で操って気に入らない政権や政治家、法案を潰しにかかっていると見るべきかも知れません。彼らは日頃記事ネタ提供で餌付けしたマスコミの記者や左派系野党議員へのリークで世論を煽るようなことをします。

このブログでよく引き合いに出させて頂いていますが、菅政権で内閣官房参与を務められてきた高橋洋一さんが自身のツイッター上で他国と日本を比較した新型コロナウィルス感染者数のグラフを提示しながら『日本(の感染者数の状況)はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと笑笑』と発言したり、『日本は緊急事態宣言だといっても欧米からみたら戒厳令ではなく「屁みたいな」ものではないかな』とツイートしたために物議となってしまいました。

 

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マスコミは この高橋氏の発言をやり玉にあげ、氏は「人の命や平穏な暮らしを軽んじている」などと激しく非難します。しばらくするとツイッター上で「#高橋洋一内閣官房参与の辞任を求めます」という左派系活動家らしきアカウントによるハッシュタグデモがはじまりました。私はこれを見た瞬間にマスコミ+左派系ネット工作員財務省関係者(+C国共産党工作員)らによる高橋洋一潰しだと直感したのです。この騒動が起きたとき、緊急事態宣言の再々発令で需要が落ち込み、潜在GDPとの需給ギャップが広がっているので追加の経済対策やそのための補正予算計上の必要性を求める声が出ていました。高橋洋一氏も追加の財政出動が必要だと訴えていた論客のひとりで、その時期菅総理とも会見していました。何を話あっていたのかは公表されていませんが、追加経済対策の財源確保に関する菅総理からの質問に答えられていた可能性が高いと思われます。

高橋洋一氏は安倍前総理からの相談にも何度となく応じてこられ、昨年実施された臨時定額給付金国民ひとりあたり10万円の支給のときについても、国債を日銀が買い受けする形でその財源を確保できると高橋氏が答えたために実現できました。その後もコロナ禍で打撃を受けた事業者や個人を支援する補償金や補助金等の拡充を氏は提言されております。氏の「さざ波」発言を非難したり、高橋洋一氏や竹中平蔵氏のような新自由主義者は弱者の痛みはわからない」などと批判をしていた人の中には定額給付金の再支給を要求している人もいました。日頃高橋氏の発言をまともに聞いていない人が氏の内閣官房参与の辞任を求め、実際に辞職に追い込みましたが、その後に就任した内閣官房参与岸博幸氏でさらに緊縮色が強い人に入れ替わってしまったのです。今後給付金のような経済対策はますます実現性が低くなるでしょう。

高橋洋一氏に続いてマスコミやハッシュタグデモの標的にされたのが、西村康稔経済再生担当大臣です。

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氏はグルメサイトを通して飲食店の感染対策を評価させる「密告制度」や酒の提供をやめない飲食店に取引金融機関から圧力をかけさせるといった発言をしてしまい、これまで厳しい経営環境下で自粛に応じてきた飲食業界などから猛反発を受けました。この西村大臣の発言はとても許されないものですし、現実性がまったくない対策なのですが、これも財務官僚らが仕掛けた罠であることが浮かんできました。7月12日に国民民主党山尾志桜里議員がツイッター上で銀行などに飲食店の監視をさせる案について書かれた政府内文書を公開し、「発出前の事前調整は金融庁監督局監督調査室・財務省大臣官房政策金融課・経産省中小企業庁金融課の3部署と内閣官房でなされており、麻生大臣にはあげていなかったとのこと」とツイートします。

つまり金融機関を通した飲食店の監視という案は財務省系の金融庁監督局監督調査室と財務省大臣官房政策金融課、そして経産省中小企業庁金融課の官僚が作成したものであって、経産省は西村大臣に報告したけれども財務省系の財務省大臣官房政策金融課と金融庁監督局監督調査室は麻生財務大臣にこの文書を報告していないのです。結局元通産官僚であった西村大臣は迂闊にも部下からの提案を吟味しないまま発表してしまい、見事罠に嵌められたとみるべきでしょう。

この様子をみて元参議院議員の金子洋一さんは「財務省はわざと大臣の顔に泥を塗ったな。ひどすぎる。」とツイートされました。

金子洋一・前参議院議員(神奈川県選出)さんはTwitterを使っています 「財務省はわざと大臣の顔に泥を塗ったな。ひどすぎる。⇨財務省「強制力のないお願いで、一般的な感染対策を呼びかけてもらうものだ。圧力をかけるという指導の趣旨はなく、大臣にはあげなかった。:酒提供めぐる政府文書、財務省「要請だから大臣にあげなかった」 https://t.co/CPBzDS3O41」 / Twitter

先程申し上げたように西村大臣は経産省の前身である通産省の元官僚らしく、先走り気味でおっちょこちょいなところがある人だと聞きます。しかしながら緊急事態宣言下で休業や時短営業に応じてきた飲食店等に対する役所からの協力金支払いが滞りがちである中、西村大臣はその手続きの簡素化や先払い化を進めてこられています。しかし財務省側はこれを嫌がっていました。そうした西村大臣を潰すために財務官僚がマスコミや左派系の山尾議員に情報をリークし、さらにはツイッター上で高橋洋一氏と同様に「#西村康稔の更迭を要求します」というハッシュタグデモ工作員を使って煽り立てます。西村大臣への非難は左派系だけではなく保守系アカウントや自民党支持者まで加勢し、まんまと炎上作戦は成功したといっていいでしょう。山尾議員に文書をリークしたのは酒類取り扱いの飲食店業者への圧力発言は西村大臣だけの暴走ではなく、菅内閣全体が企てていたことだという印象を植え付けるためです。しかしながら山尾議員のツイートで発覚したのは政治家ではなく官僚の僭越行為でした。まるで旧日本軍の関東軍と同じです。

ここ最近のマスコミやネット上の動きをみていると、菅政権倒閣への動きがかなり加速してしまっているなという実感があります。多くの人の心の中にいまの政権を潰してスカっとしたい。あるいはそこまでいかなくても自民党政権にお灸をすえたいと考えている人たちがかなりいることでしょう。

しかしながらそうした火遊びは結局わたしたちの暮らしを破壊することにつながります。菅政権のあとの総理候補として名前があがっている人物をみますと、河野太郎氏、石破茂氏、岸田文雄氏などです。さらに先ほど述べた林芳正氏や小池百合子氏も総理の座を狙っているといわれています。彼らはいまの菅総理以上に増税・緊縮財政指向が強く、金融緩和政策についても消極的です。彼らが政権をとった場合、再び日本は慢性的不況と低成長体質に戻ってしまい、国力全体が低下して、私たちの暮らしも脅かされることになるでしょう。特に小池百合子氏や石破茂氏に政権を握られると国政や財政が東京都のようにメチャクチャに引っ掻き回される結果になると思われます。

安倍元総理の再々登板が最善のシナリオですが、いまの時点でその動きは感じられません。経済だけではなく外交・防衛の面までも考えたとき、いろいろ不満があってもいまの菅内閣の続投が最も現実的であるというのが私の見解です。

 

 更新が滞りがちになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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暮らしの経済手帖 4周年

ここしばらく更新をサボっておりましたが、今日7月1日はこのブログサイトの前身である「暮らしの経済手帖」の開設記念日です。4周年目になります。

プロモーショナルキャラクター友坂えるも今日が誕生日という設定です。キズナアイちゃんより一日遅れです。

 

当方が経済政策に関心を高めはじめたのはリーマンショック後のことで、日本において1990年代から続く長期の慢性的デフレ不況体質からの脱却を目指すリフレーション政策について興味を抱き始めたのは東日本大震災の混乱と民主党政権の迷走の真っただ中にあった10年前のときからです。一時井上智洋さんや山口薫さんらが提唱していた公共貨幣導入や民間銀行による信用創造停止を主張する通貨改革を唱えるグループに傾倒しかけた時期があり、このときに「暮らしの経済手帖」を開設しています。しかしその後、こうした主張には無理や矛盾があることに気がつき、私の論調はニューケインジアン的な方向に回帰しました。国内でいう「リフレ派」と呼ばれる経済アカウントであります。

 

2012年末に発足した自民党第2次安倍晋三政権が、2%の物価目標(インフレターゲット)によって短期だけではなく中長期にわたって中央銀行の金融政策態度を市中に明示し、民間企業がより積極的な事業活動や事業投資を進めることを促して、雇用の拡大を計るリフレーション政策の考えを採りこんだアベノミクスを実施しました。それから9年近く経過しましたが、今もなお後任の菅義偉政権が引き継ぐかたちで政策継続されています。異次元金融緩和によって狙い通り企業の事業活動・投資の活発化と雇用の拡大を促すことができたのですが、そのピークと思われる2018年後半においても消費者の消費行動を積極的に転じさせたとはいえず、不況から脱したもののデフレ体質から完全に抜け出しきれていないままです。そうこうしているうちに新型コロナウィルスの感染拡大がはじまり、経済活動が麻痺しかけてしまいました。世界各国の政府と中央銀行は前例を見ないほどの金融緩和と財政出動を行って、民間の生産活動や自国民の生活を維持できるように支援をしています。

 

そうしたコロナ禍もワクチン接種の拡大によって収束化が見えかけています。本格的な経済活動の再開と人々の生活の再建を進めることを考えていかねばならない段階になってきています。今回のコロナ禍は通常の不況と異なり、独特の大きな歪を遺しています。その例のひとつが「K字回復」と云われる業種や所得・資産階層ごとに異なる回復状況の二分化です。モノなどの製造業種はいち早く回復したものの、飲食や観光・宿泊業、興業など対面サービス業の打撃や回復の遅れは深刻なままです。政府による財政的支援策も通常とは考えが異なり、行政側の裁量によって被害が深刻な人々に手厚く支援をするやり方をしないといけないのです。

金融政策の判断も同様です。次回お話するつもりですが、多くの人々が思うように単純な「物価が上がったら金融政策を引き締めないといけない」という政策判断は通用しません。大きな落とし穴があります。

 

今回のコロナ禍は経済ウォッチャーにとって実力や力量が試される大きな試練といえます。

4年目の「暮らしの経済手帖」はそれに挑まねばなりません。

 

更新が滞りがちになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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三度目の緊急事態宣言発令

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前回「日本経済再起動に向けて ~護りから攻めのフェーズへ~ - 新・暮らしの経済手帖 ~時評編~ (hatenablog.com)」 という記事を書き、経済復興に向けた対策への転換について述べましたが、今日4月25日より東京、大阪、兵庫、京都の4都府県において三度目の緊急事態宣言の発令となってしまいました。5月11日までの短期集中型となりますが、今回百貨店やショッピングセンター、それに映画館など建物の床面積の合計が1000平方メートルを超える大型の施設にも休業要請を拡大しており、強い措置となっています。

政府は休業に協力する百貨店などの大型施設に1店舗当たり1日20万円、こうした大型施設に入居するテナントには1店舗当たり1日2万円の協力金を支給するとしていますが、こんなはした金でとても損失補填ができるわけがありません。百貨店の売り上げは一日数億円。4000~5000人の人が働いています。ナメているとしか言いようがないでしょう。百貨店・映画館・図書館などクラスターが発生していない場所をなぜ閉鎖するのか」など反発の声がかなり出ています。

news.yahoo.co.jp

今回の緊急事態宣言Ⅲについてはあまりに唐突で、さらに実効性も疑われていることが大きな不信と不満を呼んだのでしょう。

 

関西の場合はより感染力が高いとされる新型コロナウイルス変異株の新規感染者の増加が目立っていました。しかも高齢者だけではなく若い世代の人への感染が目立っています。重症病床が完全にオーバーフォローしており、軽症や中等症対象の医療機関が重症者を受け入れざるえない状況です。そのために吉村洋文大阪府知事は緊急事態宣言の再発令を国に要請するに至ったのですが、日本の場合、世界的にみても人口比でみたコロナ感染者数の割合がさほど高くないにも関わらず、医療機関の病床が逼迫します。現場スタッフの不足が慢性化し、疲弊してしまっている有様です。このような状況が生まれる背景については「コロナ感染拡大がひどくないはずの日本でなぜ医療崩壊の危機が叫ばれているのか | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)」という記事で書いています。

ameblo.jp

 日本の医療機関は他国に比べ民間病院の割合が非常に高く、さらには開業医の割合も大きいために、行政側が強権発動で「コロナ感染患者の受け入れをせよ」と命令することができません。結局公立病院の一部医師や看護師に負担が集中してしまう問題があったことなどを記事で書きました。この問題が解決する前に再び感染拡大が始まってしまったのです。

関西における感染拡大と医療機関の逼迫は深刻化しているのですが、問題は大阪府より先に緊急事態宣言の再発令を要請した東京都です。新規陽性者数は増えつつあったものの、入院患者数・重症者数ともに大きな変化はありません。医療供給逼迫とはいいがたい状況であるにも関わらず小池百合子都知事は緊急事態宣言の再発令を要請していたのです。不必要な私権制限であり違法の疑いが出ています。

news.yahoo.co.jp

 新型コロナ対策はただウィルスの感染者数を抑え込むことだけを考えればいいというものではありません。それによってウィルス感染による死亡者が減ったとしても、社会活動や経済活動の停止によって生活困難の状況に陥り、自殺や困窮死を増やしてしまったら元も子もないのです。

何度も経済活動を停止させることを繰り返すことによって、飲食業だけではなく小売販売業、興業など対面サービス業とその関連業が壊滅状態となり、コロナ禍が収束しても元へ回復しないという状況になることを私は恐れています。これを私はサプライサイドの壊死と呼んで警告してきました。人間の体に例えるとなんとか生命は維持できたけれども、手足の細胞が壊死してしまって切断しなくてはいけなくなったとか、重い後遺症を遺してしまったような状況になりうるということです。とくに小池都知事については民間のサプライサイドの壊死に対する思慮が及んでおらず、緊急事態宣言を政治的かけ引きの道具に使うような手口の汚さを感じます。

それはさておき、サプライサイドの壊死が起きないように政府は今年度の補正予算を編成し、新たな追加経済対策がいつでも打てるように準備しておかねばならないでしょう。現行の予備費5兆円に加え、20兆円規模の予算追加です。

日本においては相変わらず民間事業者や個人の苦境に目を向けず、財政規律のことばかりしか頭にない人たちが、大規模な財政出動を阻もうとしていますが、サプライサイドの壊死を引き起こす方がのちに大きな経済問題や財政悪化を招くことになりかねません。一部で1966~1980年代にかけておきたスタグフレーションの再来を懸念する声が出ていますが、これも原因は民間産業衰弱化というサプライサイドの腐食がもたらしたものでした。

この先一年以上はこうした混乱が続くかと思われますが、先を見据え日本経済再起動に向けて進むしかありません。

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