新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

2019-01-01から1年間の記事一覧

低所得者だけではなく低所得状態でも給付される給付付き税控除

今回は給付付き税控除やベーシックインカムと生活保護との違いについて話します。以前三橋貴明がベーシックインカムというけれども国民に現金を配る制度だったら既に生活保護があるじゃないかといったような主旨の発言をしています。 しかしながら両者で大き…

徴税と給付の公正化は歳入庁創設とマイナンバーが不可欠

ここのブログサイトの「ベーシックインカム構想 」編で紹介しているBI制度設計案は所得税制に基づく給付付き税控除という制度を土台にしたものです。詳しいことは「標準的なベーシックインカムの制度設計案 」で述べました。 国民全員に所得税や資産税を課…

ベーシックインカムと他社会保障制度との兼ね合い

前回ベーシックインカムは基本的に所得税制と組み合わせた形で制度設計するのが望ましいという話をしました。 前回記事 「ベーシックインカムの財源はなぜ所得税主体なのか 」 前々回記事 「標準的なベーシックインカムの制度設計案 」 原田泰教授のベーシッ…

ベーシックインカムの財源はなぜ所得税主体なのか

前回の記事ではもっとも標準的なベーシックインカムとその露払いというべき給付付き税控除の案を紹介しました。 こちらが推奨するのは所得税制と一体化させた包括的現金給付制度です。 ベーシックインカムは国民すべてに無条件で同じ金額の現金を直接給付す…

標準的なベーシックインカムの制度設計案

「ベーシックインカム構想 」の第3回目ですが、今回はわりと標準的なベーシックインカムの制度設計案について解説していきましょう。給付付き税控除(負の所得税)を土台に構築されています。 まず給付付き税控除ですが、確定申告とかをするとわかるように…

何のためにベーシックインカム?~BIへの期待は多様~

国民の誰もが無条件で分け隔てなく、現金が支給されるというベーシックインカムという制度に期待を持つ人が徐々にですが増えつつあります。このアイデアは非常にシンプルかつ包括的なもので、右派左派問わず、その魅力に惹かれます。しかしながら慎重派や反…

現実的なベーシックインカムの導入を目指すために~ベーシックインカム編序章~

今回からいよいよ待望(?)のベーシックインカム構想 編に入ります。このブログサイト開設当初から是非とも取り上げたかったテーマです。 ベーシックインカムは国がすべての国民に一定額の給付金を無条件で定期的に配り続ける制度です。この制度がもし実現…

雇用維持と防貧という国家の責務を果たせ

「貧困・雇用・格差問題 」編の締めくくりと同時に、この数ヵ月で顕著になってきた景気減速の動きへの対策について話していきます。 日本は過去四半世紀近くも経済活動を低迷させ続け、その間の経済成長率が世界最下位というとんでもない記録をつくってしま…

教育は貧困の連鎖を止める~教育は国家による投資~

「貧困・雇用・格差問題」編はもうぼちぼち終わりにしたいと思っていますが、今回は防貧政策として有効だといわれる教育政策について取り上げます。これはよくいわれることですが、親の貧困が子どもに引き継がれてしまうという「貧困の連鎖」問題があります…

消費税に対する幻想が将来を奪う

今年2019年10月に消費税率を10%に引き上げる予定となっており、方々から非難の声が上がっています。 こちらもかねてより、まだ景気回復の動きが盤石とはいえない時点での消費税率引き上げにずっと反対し続けてきました。ここ最近中国・アメリカ・EU圏におい…

経済格差と税制を考える

ずっと日本の左派政党の批判や彼らが陥りがちな解雇規制緩和や金融政策、実質賃金、企業の内部留保や労働分配率に関する勘違いについて書いてきましたが、ここで再び経済格差とその是正策についての話に戻します。今回のお題はそのために設定されている所得…

現代の貧困や労働問題に対処できなくなってきた日本の左派政党

「貧困・雇用・格差問題 」編だと言いつつ、左派政党やその支持者には受け入れられにくい話ばかり続けてきました。今回の話は1980年代で行き詰った左派政党のイデオロギーや労働組合などの活動と現代の貧困や雇用問題に対処できなくなってしまっていることに…

勘違いされがちな企業の内部留保や労働分配率のこと

低所得者層から中所得者層の生活水準向上のための経済政策のあり方を問う目的で書き進めている「貧困・雇用・格差問題 」編ですが、この問題が議論されるときに起きやすい解雇規制や最低賃金、実質賃金などに関する様々な誤解について指摘し続けております。…

一見誤解されやすい解雇規制や最低賃金・金利・実質賃金の話

比較的左派系の人たちが興味や関心を持つであろう「貧困・雇用・格差問題 」編ですが、前回の「逆にロスジェネ層や女性就労者・ひとり親世帯を苦しめる昭和型雇用制度 」ではどちらかといえば新自由主義者(ネオリベ)的な味付けの記事となりました。2~3回…

逆にロスジェネ層や女性就労者・ひとり親世帯を苦しめる昭和型雇用制度

「失われた20年」といわれる1990年代以降の日本経済停滞によって、生まれた貧困や経済格差問題のことを取りあげ続けています。 「1990年代の雇用不安定化とロスジェネ世代の発生がもたらした深い傷 」という記事で20年間にも及ぶ雇用の不安定化によって正規…

「失われた20年」で露呈した高度成長期型社会保障制度の限界

今回の話はバブル崩壊後に様々なかたちで露わになった日本の縦割り型社会保障制度の綻びや限界について述べていきます。前回の最後でも1990年代を境に社会保険料収入の伸び悩みで社会保障財源の収支が悪化しはじめたことを話しております。1997年より本格的…

1990年代の雇用不安定化とロスジェネ世代の発生がもたらした深い傷

日本の貧困や経済格差問題を考える上で避けて通れない「失われた20年」と呼ばれる1990年代以降の慢性的経済不況問題の話をしています。今回から雇用の不安定化がもたらした世代間・生年間格差問題に入ります。1990年代以降の雇用不安定化は三重野総裁時代以…

価格破壊が生んだ雇用破壊・技術破壊・文化破壊

今回も悪夢の1990年代についての話です。 バブル景気が崩壊したとき自分はまだ地方の大学生でした。自分が受講していたある講義を行っていた講師の方と懇意になり、毎週の講義が終わるごとに近くの喫茶店で夕食を共にさせていただきました。そのときにこの先…

不確実性を増した1990年代の日本経済

日本の貧困・格差問題についての考察ですが、まず1980年代まで続いた終身雇用制度や完全雇用状態の行き詰まりについて取り上げます。 日本経済は戦後の高度成長期から1980年代のバブル景気まで、右肩上がりの成長を続けました。この時代は職業のより好みをせ…

日本の貧困・経済格差は慢性的な有効需要不足が生んだもの

「貧困・雇用・格差問題 」編はここから日本における問題を考察していきます。 トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」について、ここで取り上げてきましたが、日本の場合は他の世界各国に比べてピケティ教授が指摘してきたような極端な所得や資産格差が少な…

岩井克人教授によるピケティ「21世紀の資本」に対する論評

トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」についての話は第6回目です。今回は最後に岩井克人教授が書かれた論評について紹介しておきます。岩井教授はピケティ教授の仕事に敬意を持ち、積極的に引き合いに出しつつも、例のr>g(資本収益率>経済成長率)の不等…

日本で問題なのは経済格差より経済全体の地盤沈下

トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」についての検証・第5回目です。 ピケティ教授は世界全体において極端な富の偏在と集中が発生しており、僅か1%の富裕層が地球上の約半分の富を独占・寡占してしまっている問題について指摘をしました。教授は過去200年…

ピケティ教授が提案した累進所得課税と資産課税による再分配

トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」を叩き台にして、いま世界規模で起きている富の一極集中問題について話を進めていますが、その4回目です。今回はピケティ教授が提案した資本主義経済における経済格差の是正策である累進所得課税と資産課税の妥当性や実…

資本の膨張と富の寡占が起きてしまう背景

今回もまたトマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」で取り上げられていた経済格差問題の話です。 参考 「ピケティ教授が立証しようとした資本主義経済における経済格差 」 前回は日産の会長を務めていたカルロス・ゴーンが会社の利益を私物化してしまっていた…

カルロス・ゴーンの貢献は高額報酬に見合ったものだったのか?

前回の記事「ピケティ教授が立証しようとした資本主義経済における経済格差 」の続きで、教授が問題視していた富の偏在や寡占がなぜ起きるのかということについて、こちらで考察していきます。 ピケティ教授は「21世紀の資本」においてモノやサービスを生産…

ピケティ教授が立証しようとした資本主義経済における経済格差

「マルクスの労働価値説と剰余価値説は正しいのか 」でマルクスやエンゲルスは資本主義経済下において労働者はその労働力を資本家に搾取され、経済的不平等が発生する構造を「資本論」で書き明かそうとしたという話をしました。彼らは(労働)時間という観点…

国家社会主義と官製統制経済の愚かさ

前回の「労働者の貧困を救えなかった社会主義国家 」は旧ソ連や中国共産党などといった社会主義国家の多くは中央集権的な独裁国家となり、彼らが敵視する資本家や地主だけではなく、多くの民衆の命まで大量殺戮や貧困による餓死で奪っていった歴史について語…

労働者の貧困を救えなかった社会主義国家

「貧困・雇用・格差問題 」の前回はカール・マルクスとエンゲルスによって著された「資本論」の内容について触れました。商品の交換価値(市場価値)はその商品を生産するために投じられた労働量によって決まる労働価値説や剰余価値説について簡単に説明する…

新年のご挨拶 (後日記事削除します)

新年あけましておめでとうございます。2019年の初投稿で通常記事ではありませんので後日削除します。 このブログを書き始めて2回目の新年を迎えましたが、もう一度経済ブログを開設したときの原点についてお話します。 このブログのタイトルは「暮らしの経済…